「真空吸着搬送」をテーマにした本連載において、前回は、真空吸着搬送における吸着把持の原理、自動化システムの仕組みについて解説しました。今回は、吸着搬送ロボットの真空吸着システムの状態監視をどのように行うべきかを考えてみたいと思います。
「止まらない工場」や「多品種少量生産の自動化」などの標語で語られる、これからの生産工場では、安定して生産を継続できる設備構築が求められます。これに加えて、設備保守の省力化をかなえるシステム構築や、予期せぬダウンタイムを抑止するための施策が求められます。設備自らが自律して異常予兆を捉えることができる、「状態監視」の仕組みを導入することが必要になります。
前回は、真空吸着搬送における吸着把持の原理、自動化システムの仕組みについて解説しました。今回は、吸着搬送ロボットの真空吸着システムの状態監視をどのように行うべきかを考えてみたいと思います。
前回で説明したように、ベーシックな空圧機器と電気回路を組み上げれば真空吸着システムを構築できます。。このような真空吸着は、古くから工業の現場で使われてきたオーソドックスな手法といえます。それぞれの構成要素も単機能なので調達コストを低く抑えることができ、現在もこの従前のやり方をそのまま使い続けている現場は多くあります。
しかしこのベーシックなシステムは、それ単体ではシステムの状態や健全性をセンシングできず、また上位制御機器側へ状態を知らせる手段を備えていません。
例えば吸着パッドは、経時的にグリップ力が劣化していきますが、それ自体に状態を検知する機能を持たないため、状態の変化をシステムが直接気付くことは難しいです。
制御に関係する信号入出力経路に目を向けたとき、吸着指令入力や真空スイッチからの出力は、単純な2値のデジタルロジック信号に限られています。このため、入出力を受ける上位制御機器は、それらの信号から吸着パッド/エジェクタを含むシステムの状態を把握するのは困難です。
もしこのようなベーシックな吸着搬送システムを搬送工程で運用し続けていくとどうなるでしょうか。経時劣化に起因する不具合が予期せぬタイミングで発生する可能性があり、またそれによって思わぬ損失を被るなどの事態が起こり得ます。
吸着搬送の不具合の代表的な表れ方は、搬送過程におけるワークピースの脱落です。これは、吸着系統の各機能要素の経時劣化などを含む、システムの状態変化によって引き起こされます。もし、吸着搬送の過程でロボットや搬送機がワークピースを落としてしまうと、ワークピースが傷ついたり、脱落したワークピースが作業者や設備などに悪影響を与えたり、復旧を行うまでのタイムロスが生じたりといった損失が発生する可能性があります。
真空吸着システムの不具合の厄介なところは、劣化が経時的にシステム内部で進行している間も、ロボットによる吸着搬送作業それ自体は継続でき、外から観察する分には一見問題がないように見えることです。
大きな不具合に至る前に、不調に気付くことができないのでしょうか。
真空吸着システムの健康状態を把握するためには、基本的には空圧配管の圧力推移を観測する必要があります。そして真空吸着システムの異常を示唆する予兆は、圧力推移に特徴的なパターンとして現れてきます。そのパターンを捉えることができれば、機器の不調を推し量ることが可能になります。
ここでは、真空吸着システムの真空圧の推移をリアルタイムで把握できるという前提で、幾つか例を示します。
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