生成AIブームの裏で深刻化するデータセンターの電力消費問題。この解決策として、日本電気硝子は低誘電ガラスファイバー「D2ファイバ」を開発した。
日本電気硝子は2025年12月2日、オンラインで記者説明会を開催し、低誘電ガラスファイバー「D2ファイバ」を開発したと発表。併せて、同製品の販売開始も公表した。
生成AI(人工知能)の普及により、データセンターやAIサーバにおける消費電力増大が業界全体の課題となっている。そのため、半導体材料市場では、信号ロスを減らし省電力化できる「低誘電材料」に高いニーズがある。そこで、日本電気硝子はD2ファイバを開発した。
D2ファイバは、誘電正接が0.0017tanδ(@10GHz)と、「第2世代」の低誘電ガラスファイバーの中でもトップクラスの誘電正接を誇る。そのため、信号の伝送損失を抑え、通信の高速化/大容量化を実現し、AIサーバやデータセンターの性能向上に貢献する。通信ロスによる熱発生も低減し、冷却負荷や消費電力を抑えられるため、多くの電力を消費するAIインフラにおいて持続可能な運用を後押しするという。
日本電気硝子の担当者は「従来のEガラス(標準的なガラス)に比べ、誘電率および誘電正接を大幅に低減している。マザーボードなどの回路基板にD2ファイバを使用することで、信号の減衰を抑え、熱への変換(ロス)を防ぎ、結果としてサーバ全体の消費電力削減に貢献する」と話す。
用途としては、AIサーバ用マザーボード、高周波通信機器用基板、半導体パッケージ基板などでの利用を想定している。
今後は、顧客のガラスクロス加工メーカーにヤーン状のD2ファイバを安定供給し、国内外で広がる低誘電ガラスファイバーの需要に対応する。日本電気硝子の担当者は「当社がD2ファイバを製造し、ガラスクロス加工メーカーがD2ファイバを布状に加工する」と説明した。
既に顧客のガラスクロス加工メーカーで製品評価が完了しており、今後は顧客と連携しながら市場展開を進めていく。さらに、市場動向を踏まえながら、低誘電ガラスファイバーや低膨張ガラスファイバーの開発を推進する。
「ガラスクロスメーカーでのD2ファイバの評価は完了しており、非常に良好な評価をもらっている。今後は、実際に布状のD2ファイバが採用された基板が量産されるフェーズに入っていく」(日本電気硝子の担当者)
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