「AU 2025」で何が語られた? オートデスク日本法人が解説メカ設計 イベントレポート(2/3 ページ)

» 2025年12月01日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

設計者とAIエージェントが共創する時代へ

 続けて加藤氏は、AIの取り組みにフォーカスしたキーノートの内容についても解説した。

 まず、同社のAIに対する取り組みの方向性として、長年蓄積してきたデータとAPI(Application Programming Interface)によって、従来は不可能とされていた方法でワークフローを支援し、業務の自動化や強化を支援するというビジョンが示された。

 また、AI活用を進める上で懸念となる、AIに対する透明性と信頼性の確保に関しても重視していることを強調した。倫理面の取り組みとして、AI機能の学習データ、秘匿性、提供形態などを明示する「透明性カード」の対応や、2023年12月に発行されたAIマネジメントシステムに関する国際規格「ISO 42001」にいち早く準拠したことも紹介された。

AIに対するオートデスクの取り組み AIに対するオートデスクの取り組み[クリックで拡大] 出所:オートデスク

 技術面では、MCP(Model Context Protocol)をプラットフォームに組み込むことで、AIエージェントがリアルタイムにデータを発見し、APIに直接アクセスして操作できるようにする「Autodesk MCP Server」(プライベートβ版リリース予定)について説明が行われた。

Autodesk MCP Serverについて Autodesk MCP Serverについて[クリックで拡大] 出所:オートデスク

 キーノートのステージでは、「Autodesk Assistant」を介し、従来は操作手順などを理解していなければ実行できなかったSSO(Single Sign-On)の設定やライセンスの割り当てを対話形式で行うユースケースを紹介した。また、最新バージョンの3Dモデルを検索して表示したり、ツール間のやりとりに伴うデータ変換を肩代わりしたりするなど、「手作業の自動化」「断絶された情報の接続」「リアルタイムな洞察の提供」をキーワードに、Autodesk Assistantを活用した対話形式による、設計者とAIエージェントの共創の姿が示された。

 キーノートの後半では、Autodesk Research 上級副社長のマイク・ヘイリー(Mike Haley)氏が登壇し、AI主導の新たな設計アプローチ「ニューラルCAD基盤モデル」について解説した。

ニューラルCAD基盤モデルについて ニューラルCAD基盤モデルについて[クリックで拡大] 出所:オートデスク

 同社のAIに関する研究開発は、2018年に発足した「AI Lab」が主導しており、これまでに90本以上の査読付き論文を発表するなど、CAD領域におけるAI研究の最前線に立っているという。ヘイリー氏は、「CADの中核であるパラメトリックCADのパラダイムは40年間変わっていない」と指摘し、従来のパラメトリックエンジンを“ニューラルCADエンジン”で強化する方向性を示した。

 ニューラルCAD基盤モデルを前提としたFusionを用いた設計では、設計者がテキストなどで作りたい製品形状を指示すると、AIが設計案を提示してくれる。それもFusionで編集可能なCADモデルとして生成されるため、そのまま設計作業に移行できる。また、3Dモデルに対して追加部品のスケッチを描けば、AIがそれを解釈し、正確に位置合わせした上で3Dモデル化してくれる。このニューラルCAD基盤モデルは、学習と改善を繰り返し、ユーザーのニーズや作業方法に絶えず適応していくものだという。

 さらに、ヘイリー氏は、設計者の発話内容を入力情報として扱う開発中の将来技術の一部についても触れた。例えば、建築設計で「ここが窓」「ここが屋根」といった音声からAIが設計意図を理解し、設計を支援する機能や、製品設計時にAIと対話しながらデザインレビューを行い、モデル改善提案(アドバイス)を得るような機能などが紹介された。

建築設計で「ここが窓」「ここが屋根」といった音声からAIが設計意図を理解し、設計を支援する機能 建築設計で「ここが窓」「ここが屋根」といった音声からAIが設計意図を理解し、設計を支援する機能[クリックで拡大] 出所:オートデスク
製品設計時にAIと対話しながらデザインレビューを行い、モデル改善のアドバイスを得る機能 製品設計時にAI(アヒルのアイコン)と対話しながらデザインレビューを行い、モデル改善のアドバイスを得る機能[クリックで拡大] 出所:オートデスク

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