1つ目の理由は、インターロックのパターンが増えることです。例えば、「A地点とB地点の2箇所で仕掛かりワークを再配置し、自動運転を再開できるようにしたい」とします。そうすると、自動運転の再開条件としては、以下の4パターンを考慮しなければなりません。
| A地点の状態 | B地点の状態 | |
|---|---|---|
| パターン1 | ワークなし | ワークなし |
| パターン2 | ワークあり | ワークなし |
| パターン3 | ワークなし | ワークあり |
| パターン4 | ワークあり | ワークあり |
| 表1 考慮しなければならない、自動運転の再開条件 | ||
どのパターンであっても同じように運転を再開できるなら難易度は低いのですが、
といった条件が加わると難易度は高くなります。これが仮にA〜D地点という4箇所になると、パターン数は16にまで増加し、指数関数的に複雑化するため、慎重な設計が求められます。
2つ目の理由は、生産ワークに関する管理情報の扱いが複雑になる点です。近年の生産設備では、「PLCは単に設備を動かすために使うのではなく、生産管理情報も扱えるようにする」といった使われ方が増えています。一例として、
などがあります。高度な生産設備では、「ワークにID情報を記録したバーコードを貼り付け、生産管理システムとデータ連携させる」といった運用も一般的です。
ただし、こうした情報は基本的に「決められたワーク投入部から投入されたこと」を前提としています。つまり、異常停止後にワーク再配置で運転を再開したい場合は、その再開方法で本当に問題がないかを注意深く検討する必要があります。例えば、
といった検討項目が挙げられます。このレベルになると、生産設備のソフト設計だけでは完結せず、品質管理、生産管理、ITシステムエンジニアとの連携が不可欠になります。
3つ目の理由は、ワーク再投入時のポカミスを考慮しなければならないことです。特に手作業でワークを再投入する場合は注意が必要です。例えば、長方形の板状ワークを投入する際に、横長で投入すべき箇所を誤って縦長で投入してしまったらどうなるでしょうか? そのまま設備を稼働させると、
など、高い確率で不具合が発生します。メカ的にポカヨケ(誤操作防止)が実装されていれば問題ありませんが、そうでない場合は電気制御での対策が必要になります。
その際は、
といった仕様を定義する必要があります。
さらに、「ワークを再配置する際に、配置してはいけないワークIDが存在する」など、生産管理上の制約があるケースでは、ポカヨケとして再投入時にもワークのバーコードを読み取り、ソフト側で照合するフローを組み込むことが求められます。 (次回へ続く)
りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者
2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。
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