この壮大な構想は、ISC単体ではなく、多様な分野の知見を結集して検討された。ワーキンググループには、エア・ウォーター、ENEOS Power、鹿島建設、商船三井、JFEエンジニアリング、日本郵船、三井不動産といった業界のリーディングカンパニーが参画し、約1年余りにわたり、計22回の議論を重ねてきた。
ISCはこの次世代宇宙港を観光、見学、教育、研究利用などの目的で人々が訪れる「多機能複合拠点」としての活用を目指している。例えば、射場の提供や燃料調達、電力設備、ターミナルなどの運営を直営(宇宙輸送系)ビジネスとし、施設のテナントや倉庫などの運営を非直営ビジネスとして、それらを手掛ける企業が運営の主体となるものの次世代宇宙港の運営者も関わりを持つことを想定する。
報告会では、この構想に基づいた事業収支のシミュレーションも公開した。まず、次世代宇宙港の開港に向けた初期投資額は、陸上/洋上の施設や船などを含めて約2.5兆円と試算。年間の事業収支は前述した直営ビジネスと非直営ビジネスを合計し、売り上げが約6300億円、経費が約6100億円で、約200億円の利益を想定する。この他に、イニシャルおよびランニングコストがもたらす経済波及効果や、就業誘発効果も見込んでいる。
畑田氏は「(宇宙港を)単なるコストセンターではなく、街づくりによって付加価値を生むプロフィットセンターにしたい」と述べ、宇宙港を核とした新たな経済圏の創出に意欲を見せた。
一方で、次世代宇宙港の実現に向けては「法律」「技術」「ビジネスモデル」「資金」といった複数の課題があることも整理された。実際に開港やロケットの打ち上げ実証をする際には、行政らと法改正を含めた検討を行う必要がある。
ISCは、「次世代宇宙港構想」をさらに発展させるため、2026年4月を目標に第2期の新たなワーキンググループを立ち上げることを明らかにした。畑田氏は、今回の参加企業にぜひ継続参加を願うと同時に、「メンバーを拡大してやっていきたい」と述べ、新たな参加者も幅広く募る方針を示す。
第2期では、主に2つのテーマを軸に進める予定だ。1つは今回策定した陸上/洋上の各施設のコンセプトについて、各機能や設備など設計の解像度を一層高めること。もう1つは、収益創出や資金循環を促進するための新たなビジネスモデルや、ファイナンスの手法を具体的に検討することである。ISCは、これら2つの取り組みを連結させ、宇宙港を「プロフィットセンター」として機能させるための検討を深めていくとしている。詳細な募集要項については、固まり次第、改めて告知される予定である。
畑田氏は、この次世代宇宙港はISC専用の施設ではなく、国内外の多様なプレイヤーが利用できる開かれたインフラを目指す考えを示した。「究極的には、われわれはこのスペースポートのユーザーとして利用料を払ってロケットを離着陸するような形が一番美しい」(畑田氏)。
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