太陽ホールディングスは、2025〜2030年を対象とした新中期経営計画で、コア事業であるソルダーレジストインキの全方位的な成長に加え、次世代の利益の柱となる新規事業創出を加速するとした。本稿ではこれを踏まえて、同社のエレクトロニクス事業で中核を担う太陽インキ製造 取締役/技術開発センター長の宮部英和氏へのインタビューを通じ、同事業の取り組みを深掘りする。
太陽ホールディングスが策定した、2025〜2030年対象の新中期経営計画(以下、新中計)では、半導体産業の中長期的な成長を前提に、エレクトロニクス事業を引き続きコアと位置付けている。その中で、ソルダーレジストの全方位的な事業成長を推進するとともに、次に続く新たな利益の柱となる事業の創出にも取り組む方針を掲げている。
本稿では、新中計で示されたエレクトロニクス事業の方向性を踏まえ、同事業の中核を担う太陽インキ製造 取締役/技術開発センター長の宮部英和氏に、事業の特徴や戦略、最新の取り組み、そして今後の展望を聞いた。
エレクトロニクス事業では、ソルダーレジストなどのプリント基板(PCB)用部材をはじめとする電子部品用化学品部材の開発/製造を行っている。ソルダーレジストは、さまざまな電子機器部品を搭載したPCBの表面を覆い、回路パターンを保護する絶縁膜となる。主な役割としては、「不要な部分へのはんだの付着防止」「ほこり、熱、湿気などからの回路パターンの保護」「回路パターン間の電気絶縁特性の維持」が挙げられる。
宮部氏は「エレクトロニクス事業は、ソルダーレジスト製品の展開を基幹事業に据えており、同製品などの絶縁材料が営業利益全体の大部分を占める。ただし、ソルダーレジスト以外にも層間絶縁材料や感光性カバーレイ、導電性材料といった周辺材料も幅広くラインアップしており、プリント基板に関するさまざまな材料で悩みを抱える顧客が相談しやすい環境を構築している」と話す。
新中計では2031年3月期の売上高目標として、2025年3月期実績と比べて約51%増の1800億円を掲げ、エレクトロニクス事業ではそのうちの約71%となる1280億円の達成を目指している。エレクトロニクス事業の営業利益に関しては、2025年3月期実績と比べて約82%増となる390億円を掲げている。
これらの目標達成に向け、同事業では「ソルダーレジスト製品の顧客基盤強化」「迅速な新製品上市の継続」「用途展開の推進」といった3つの柱を中心に展開するとともに、ソルダーレジスト製品に続く利益の柱となる新規事業の創出を推進している。
顧客が扱う半導体パッケージ基板の変化に関して、宮部氏は「特に半導体パッケージ基板はこれまで、配線の微細化などによりデータ処理性能を向上してきた。しかし、配線の微細化は限界を迎えつつある。そこで、先端半導体パッケージ向けの構造は2.5Dや2.xD、3Dなどの積層体が考案され、さらには複数のICチップ(プロセッサ、HBMなど)を基板上に配置するチップレット化が進んできている。こういった変化に伴い、ソルダーレジストには薄膜化の要求が高まり、その中でさらに高機能化が要求されるようになってきている」と述べた。
その上で、「当社のドライフィルムタイプのソルダーレジスト製品はこれまで、こういった顧客の要求に応えるべく構築したフィルム化技術によって薄膜化のニーズに対応してきた。現状、当社のドライフィルム製品は、1μmの精度で全体の厚みを均等にでき、高い絶縁性能を発揮する。今後、この薄膜化の流れによって、ソルダーレジストの厚みが薄くなっていくのは避けられない。そこで、当社は精度の高い塗工技術と高機能化対応によって、10μm程度の膜厚でも信頼性の高い製品を開発できる強みを生かして、薄膜化のニーズに応えていく」と強調した。
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