TELEPORT 1/1は、既存工場の設備更新や新たな建屋の設計/レイアウト検討など、幅広い分野における“ワークスペースの設計”に焦点を当てたコンサルティングサービスである。
通常、工場や病院などの建設プロジェクトは長期にわたり、多くの関係者と資金を要する。設計段階で多数の意思決定を行う必要があるため、関係者の合意形成が難しいという課題もある。さらに、設計上の問題の発見が遅れれば遅れるほど、対策コストが増大する点も大きなリスクである。
「こうした課題やリスクに対し、TELEPORT 1/1を活用すれば、将来その場所で働く従業員や関係者が設計の初期段階からプロジェクトに関与できるようになり、課題抽出や合意形成につなげられる。さらに、経営層にも実際に出来上がる前にプロジェクトを体感してもらうことで、意思決定にも役立てられる」と、同社 TELEPORT 1/1 プロジェクト担当のクエンティン・クアルティーノ氏は説明する。
サービスの流れは、まずヒアリングによって目的を明確化(目標設定)し、必要なデータ(点群データ、CADデータ、画像/映像、シナリオ/課題リストなど)を準備/収集する。次に、それらのデータを統合し、バーチャルツイン環境を構築して没入体験可能な環境を整える。その後、関係者を大崎オフィスのTELEPORT 1/1専用スペースに招き、HMDを装着してVR空間でワークショップを実施する。ここで得られた意見や気付きなどのフィードバックを収集し、同社のビジネスコラボレーション基盤「3DEXPERIENCEプラットフォーム」で共有/可視化して意思決定プロセスに役立てる。これら一連の枠組みをパッケージとして展開する。
「顧客から提供されたデータを基に、ダッソー・システムズのコンサルタントがTELEPORT 1/1の環境を構築する。まるで『PowerPoint』で資料を作るような手軽さで準備が完了する。ターゲットに合わせて体験内容を柔軟に調整することも可能だ」(クアルティーノ氏)
TELEPORT 1/1は既に複数の産業プロジェクトで成果を挙げている。パリ・アメリカン・ホスピタルでは、新棟の2フロアを再現し、医師や看護師、手術室スタッフらが200件を超える意見や改善案を提出した。建設前に動線や設備配置を最適化することで、竣工(しゅんこう)後の変更リスクの大幅な低減につなげた。
また、フランスの航空宇宙スタートアップであるVoltAeroは、新型ハイブリッド航空機の組み立てエリアの検討にTELEPORT 1/1を活用し、複数の専門家が設計段階から意見を交わすことでプロジェクトリスクを大幅に削減した。
さらに、化粧品大手のロクシタンでは、既存工場に新しいパッケージングラインを導入する際にTELEPORT 1/1を利用し、オペレーターや物流、メンテナンス担当者がVR空間で作業環境を体験して潜在的な問題を洗い出した。
ダッソー・システムズ 技術本部 インフラストラクチャ&アセットマネジメント シニアマネジャーの齋藤能史氏は、日本市場での展開方針について「TELEPORT 1/1を単なるVR体験としてではなく、3Dとコンサルティングを掛け合わせたサービスとして提供する」と説明する。
VR空間内で複数人が同時に議論できるというTELEPORT 1/1の特長は、参加者全員の認識を統一し、共通理解に基づく早期の合意形成を可能にする。特に、工場や建築/建設領域など、人よりも大きな構造体を対象とする分野での活用が期待されるという。
また、日本のモノづくりに根付く“擦り合わせ文化”との親和性の高さも大きなメリットである。
「関係者がVR空間に一堂に会して同じものを見ながら議論するTELEPORT 1/1のスタイルが、擦り合わせを得意とする日本の産業文化と自然にかみ合う。工場関連では、まず自動車や産業機械分野での活用を想定しているが、アイデア次第でどのようなビジネス領域にも適用可能だと考えている」(齋藤氏)
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