受託事業ではダイナミックマップの開発だけでなく空港や港湾で自動運転車を走らせる実証実験も行う。空港では、工事など動的情報を踏まえたリアルタイムな経路探索支援や、交差点を安全に通過する判断支援などを検証する。港湾では、物流動線の中にある制限区域や倉庫など実際の搬送業務を想定したルート走行でHDマップの有効性を評価する。
狭域エリア向けの自動運転に必要なダイナミックマップは、グローバル展開に向けて国際標準化にも取り組んでいる。2025年7月には経済産業省の補助事業「令和7年度国際ルール形成・市場創造型標準化推進事業費補助金」の補助対象事業者に採択されたことを発表した。
空港向けにHDマップと動的情報、静的情報を集約するデータ連携基盤の開発は、SBIR(Small/Startup Business Innovation Research)制度を通じて行う。国際航空運送協会(International Air Transport Association、IATA)に対して国際標準化を提案している。また、空港での除雪作業や飛行機のプッシュバックの支援などグランドハンドリング(地上支援作業)の業務効率化に資する情報端末の開発も並行して進めているという。
空港や港湾で検証を進めつつ、ダイナミックマップは物流センターや発電所、大規模な建設現場などにユースケースを拡張していく。空港向けの取り組みが完了するのを待ってから展開するのではなく、既にさまざまな企業などと連携を始めた。
物流関連では、東京流通センターを拠点とする「平和島自動運転協議会」に参画した他、物流施設事業を運営する三井不動産と物流自動化に向けたMOU(基本合意書)を締結した。
物流業界では残業規制の強化や人手不足に対応するため、自動化の重要性が高まっている。このため、高速道路や、新設されたインターチェンジ直結型物流センターまでの道のりはトラックの自動運転化が進められている。ダイナミックマッププラットフォームも、高速道路でのトラックの自動運転には国のデジタルライフライン全国総合整備計画を通じて参加している。
今後はインターチェンジから数km離れた立地の既存の物流センターの活用に向けて、一般道や物流センター内を走行できる自動運転の実現が求められている。物流センター内を、待機場から荷物を積み込むパースに移動し、そして待機場に戻るといった自動走行や、インターチェンジを降りてから一般道を走行し、物流センター内の待機場まで自動運転で走ることが検討事項として挙がっている。自動運転トラックがシームレスに乗り入れできるためのオペレーション確立が求められる。
MOUを締結した三井不動産との連携では、HDマップを定義するとともに、物流自動化に必要な情報を連携させたダイナミックマップを整備する。自動運転トラックと物流センターの運用管理システムが持つ情報をリアルタイムに連携させるシステムも構築する。物流センターに到着したレベル4の自動運転トラックが指定されたパースに向かうための情報提供や、物流センター内の事業者とのシステム連携を実現することを目指す。
大阪ガスとは、エネルギー事業の業務効率化に向けて、大阪ガスの関連施設内やその周辺の一般道で自動運転車の実装を推進する。施設内の車両や人の状況など動的な情報を配信するシステムを構築し、大阪ガスがかかわる多様な用途に合わせた自動運転サービスを実現していく。
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