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高価なセンサーなしに「レベル4の自動運転」、インフラ型自動バレーパーキング自動運転技術(1/2 ページ)

Robert Boschの日本法人ボッシュは2022年12月7日、東京都内でレベル4の自動運転に該当する自動バレーパーキングシステムを披露した。ドイツ連邦自動車交通局(KBA)が先日承認したばかりで、ドイツ シュトゥットガルト空港の駐車場のうちの1つで間もなく商用利用が始まる。

» 2022年12月13日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 Robert Boschの日本法人ボッシュは2022年12月7日、東京都内でレベル4の自動運転に該当する自動バレーパーキングシステムを披露した。ドイツ連邦自動車交通局(KBA)が先日承認したばかりのシステムで、ドイツ シュトゥットガルト空港の駐車場のうちの1つで間もなく商用利用が始まる(当初は車両2台分のスペースで開始)。

自動バレーパーキングシステムのデモを行った。車両に搭載されたセンサーではなく上に設置されたカメラを使った自動運転システムだ[クリックで拡大]

 現時点ではメルセデス・ベンツの「Sクラス」「EQS」の一部仕様のみがこの自動バレーパーキングシステムを利用できるが、周辺環境の認識や車両の制御はインフラが主体のシステムとなっている。周辺環境の認識は駐車場内に設置した複数のカメラで、走行に必要な判断や制御、速度やカーブの曲率などは自動バレーパーキングシステム用のサーバで決定する。シュトゥットガルト空港の自動バレーパーキングシステム対応の駐車場には、100〜200個のカメラを設置している。駐車場内の2Dマップも使用する。

 そのため、車両に搭載されたセンサーの種類や性能は問わない。インフラからの制御の指示を受けるための通信機能を持っていること、インフラの指示通りにクルマを制御できるよう、走る/曲がる/止まるがバイワイヤ化されていること、冗長性の担保など、一定の条件を満たせばどんなクルマでも受け入れられる。手動運転の車両や歩行者がいる環境でも運用可能だという。

 この自動バレーパーキングシステムは2022年に公開された国際標準規格ISO 23374に準拠している。バレーパーキングだけでなく、工場内での物流、レンタカー業者の事業所や自動車メーカーの生産拠点などの私有地内での車両の移動、公共交通のターミナルなど、さまざまな場面に応用できるという。インフラ主体のレベル4の自動運転を生かし、無人状態での洗車や電動車の充電、機械式駐車場への出し入れなどと組み合わせることも視野に入れている。

産官連携で標準化

 自動バレーパーキングシステムには3種類ある。1つが車両に搭載したセンサーで周辺環境を認識しながら走行する自律型だ。車両にセンサーを多数搭載するとコストが上がるため、台数の面での普及には時間がかかるのが課題だ。2つ目が物体認識や走行経路を決めるパスプランニングなどを駐車場のインフラで担うタイプで、Robert Boschが注力している領域だ。3つ目は、車両側の自動運転システムと駐車場のインフラの両方で責任を分担し合うタイプだ。

 現在、欧州で実用化に向けて進んでいるのが2つ目のインフラ型の自動バレーパーキングシステムだ。駐車場のインフラのコストを駐車場利用者でシェアすることで負担を下げられ、普及させる上でのメリットもある。

自動バレーパーキングシステムに使用するカメラ。Robert Bosch製ではあるが、ハードウェアにはこだわらない[クリックで拡大]

 Robert Boschとメルセデス・ベンツは以前から自動バレーパーキングの実証を行っている。インフラ型の自動バレーパーキングシステムは2015年から開発を進めており、官庁や第三者認証機関などと協力しながら実証を行い、インフラと車両のコミュニケーションに必要なインタフェースなど要求仕様を検討してきた。その上で自動バレーパーキングシステムのインフラに関するテクニカルペーパーが発行されており、今回ドイツ連邦自動車交通局にもこれらの取り組みをベースに認可を申請し、許諾を得ている。

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