分析前のトラブルを防ぎ、ルーティン分析の信頼性を高める新機能が登場。島津製作所は「JASIS2025」で、業界初となる流路の自動診断機能を搭載した一体型高速液体クロマトグラフ「LC-2070」と「LC-2080」を公開した。
島津製作所は、「JASIS(Japan Analytical & Scientific Instruments Show)2025」(2025年9月3〜5日、幕張メッセ)に出展し、同月1日に発売した一体型高速液体クロマトグラフ「i-Series(アイシリーズ)」の「LC-2070」と「LC-2080」を披露した。
i-Seriesは、コンパクトな卓上型でありながら、高い基本性能や分析の高速化などを実現したシリーズだ。同シリーズの製品は国内外で製薬企業を中心に採用されており、販売台数は累計約4万3000台に達している。
同シリーズに新たに追加されたLC-2070とLC-2080は、分析開始前にポンプのプランジャーシールやチェックバルブの不調、オートサンプラーのニードルと高圧バルブなどの詰まりの可能性を自動で検知する機能を備えている。島津製作所の説明員は「業界初の機能だ」と強調する。
また、カラムオーブン温度と連携した移動相流量制御(FlowPilot)機能により、カラムへの急激な圧力負荷を抑制しながらカラム平衡化を自動で実行することで分析データの信頼性を高められる。さらに、ポンプ内に引き込まれた移動相中にある溶存空気(気泡)を自動検知し、液の置換から装置の平衡化までを自動で行う機能(オートパージ)によって気泡を排除し、システムを正常に復旧できる。
オプションとして、カラム使用履歴管理プラットフォーム「iCMP」を備えている。iCMPは、カラムに貼り付けられた二次元コードを分析前にスキャナーでスキャンすることで、分析条件や分析回数などのデータとそのカラムの情報をひも付けられる。そのため、ユーザーは過去の分析結果を検索することで、試料がカラムに注入されてから各成分が検出されるまでの時間(保持時間)やピーク形状を比較できる。複数人でカラムを共有する場合に、前のユーザーの使用条件も確かめられる。なお、製造メーカーを問わず、全てのカラム情報の一括管理が可能で、市販のスキャナーでも二次元コードの読み取りに対応する。
「業界初の機能であるiCMPは現状のカラム管理で生じ得る課題の解消に役立つ。現在、カラムの使用ログ管理は手作業で行われており、分析時に手書き作業が必要な他、大量の管理に手間が掛かっている。使用履歴が不明なケースも多く、カラム劣化の予測や分析失敗時の原因調査などで悪影響を与えている」(島津製作所の説明員)
環境配慮に関して、高圧バルブの交換周期を従来の2倍に延ばして、消耗部品の使用量を抑えた。これまで同シリーズでは、外装パネルの3種類およびリザーバトレイにコポリエステル樹脂(PCTG)のみを使っていたが、今回は同じ部材に30%のケミカルリサイクル樹脂を加えた。
さらに、ポリプロピレン樹脂を使用したメインフレームなどの部品も、再生比率100%のメカニカルリサイクル樹脂に切り替えた。梱包(こんぽう)材の構造などの工夫によって、運送コストも削減している。
両製品では、分析中の消費電力を従来機種より減らすことで、年間約100トンの温室効果ガスの排出量削減を見込んでいる。
両製品の大きな違いは上限耐圧だ。上限耐圧は、LC-2070が50MPaで、LC-2080は70MPaとなっている。希望販売価格はLC-2070が630万円〜(税込み)で、LC-2080は740万円〜(税込み)。2機種合計の販売目標台数は発売後1年間で5000台だ。
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