AIエージェントが設計を自動化 自然言語からパラメトリックCADモデルを生成メカ設計ニュース

Accelerated Komputingは、国際共同研究を通じて開発したAIマルチエージェントシステムによる自律的パラメトリックCADモデル生成フレームワーク「MEDA」の論文を発表した。自然言語から3D CADモデルを生成/修正まで完結させる仕組みで、設計自動化の新たな可能性を提案する。

» 2025年09月03日 09時00分 公開
[MONOist]

 Accelerated Komputing(AnK)は2025年8月20日(米国時間)、ゴーデルブロックやカーネギーメロン大学、ピッツバーグ大学、テキサスA&M大学、トリブバン大学との国際共同研究により開発した、AI(人工知能)マルチエージェントシステムによる自律的パラメトリックCADモデル生成フレームワーク「MEDA(Mechanical Engineering Design Agents)」についての論文を、米国カリフォルニア州アナハイムで開催されたASME(米国機械学会)主催の「2025 国際設計工学技術会議・コンピュータ情報工学会議(IDETC-CIE 2025)」(会期:同年8月17〜20日)で発表した。

Accelerated Komputingが国際共同研究の成果であるAIマルチエージェントシステムによる自律的パラメトリックCADモデル生成フレームワーク「MEDA」に関する論文を発表した Accelerated Komputingが国際共同研究の成果であるAIマルチエージェントシステムによる自律的パラメトリックCADモデル生成フレームワーク「MEDA」に関する論文を発表した[クリックで拡大] 出所:Accelerated Komputing

 同研究成果は、米国、日本、ネパールの企業および研究機関が連携して実現したものである。日本企業のゴーデルブロックは、マルチエージェントシステムの設計と実装、深層学習アルゴリズムの最適化における技術開発を担った。

 パラメトリックCADモデリングは、寸法や拘束、設計ルールをパラメーターとして与え、スケッチやフィーチャー間の関係を数式で定義して形状を再計算/再生成する手法として知られている。設計意図の保持と変更の自動伝播により、派生仕様への対応やBOM/図面/CAEとの連携を高速化し、設計探索や変更管理の生産性向上に寄与する。

 一方で、パラメトリックモデルの作成にはCADソフトウェア操作の習熟が不可欠であり、適切な設計を実現できるようになるまでに長期間のトレーニングを要するという課題がある。

 今回の研究では、マルチモーダル大規模言語モデル(MLLM:Multimodal Large Language Model)の能力を活用し、人間の分業体制を模倣した自律的マルチエージェントシステムによって、パラメトリックCADモデルを自動生成する新たなアプローチを開発した。

AIマルチエージェントシステムによる自律的パラメトリックCADモデル生成フレームワーク「MEDA」の概要 AIマルチエージェントシステムによる自律的パラメトリックCADモデル生成フレームワーク「MEDA」の概要[クリックで拡大] 出所:Accelerated Komputing

 提案するフレームワーク(MEDA)は、設計分解(Design Expert)→CADスクリプト生成(CAD Script Writer)→実行(Executor)→ログ審査(Script Execution Reviewer)→画像審査(CAD Image Reviewer)という分業を自律的に連携させ、自然言語記述からパラメトリック3D CADモデルの生成と自己修正までを完結させる。これにより、従来の大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)単独方式が抱えていた空間推論やハルシネーションの課題を克服するとともに、CADスクリプトによる明示的パラメーター化により生成モデルの追跡性も確保する。

 評価にはベンチマーク「CADPrompt」が備える200の自然言語プロンプトを使用した。その結果、MEDAはCADスクリプトの実行成功率99%を達成。点群距離(PCD:Point Cloud Distance)は中央値0.0555、ハウスドルフ距離(HD:Hausdorff Distance)は中央値0.263となり、既存手法(CADCodeVerify)比でPCDは56.3%、HDは37.3%の改善を示した。

 また、正解形状との交差率(IoGT:Intersection over Ground Truth)では既存手法とほぼ同等の性能を発揮した。アブレーション評価(特定の要素を取り除いたり追加したりして、全体の性能への寄与度を調べる手法)では、Script Execution Reviewerの導入によりCADスクリプト実行成功率が76%から93.5%(1回)、96.5%(2回)へと向上することを確認。さらにCAD Image Reviewerが形状整合を改善する一方で、コストがベース比で7倍以上に増加するというトレードオフも定量化した。

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