手動式がレバーとギアによって羽根を回転させていたのに対し、充電式にはギアがありません。モーター駆動と電気制御によって機能を実現する構造になっており、安定した回転数を得ることができます(図8)。
手動式と同様に、本体の骨格となる部分で、樹脂製です。このカバーに羽根や基板などの内部部品が挟まれる形で組み立てられています。
7枚の羽根が一体となった構造です。羽根の内部にはモーターが組み込まれています。
羽根の中に組み込まれており、羽根を回転させる役割を担います。
羽根を回転させるための電力を供給する、充電式のバッテリーです。
バッテリーからの電力供給や、モーターの安定した制御を行うための基板です。この基板には、充電用のUSBポートや電源/風量の切り替えスイッチも搭載されています。
充電式ハンディーファンにおける以下の全ての動作は、基板によって制御されています。
電気的に制御されているため、動作の安定性や風量に優れていますが、充電が切れると当然ながら動作しません。また、動作中にバッテリーが発熱する可能性もあるため、バッテリー管理と放熱設計が重要になります。
充電式は、正確には100円ではありませんでしたが、それでも低価格品であることに変わりはありません。そして、低価格品とはいえ、手動式、充電式それぞれに異なる設計思想と工夫が込められています。
手動式は、最小限の部品でギア比を活用し、回転効率を高める「機構設計」。一方、充電式は、安定した性能と安全性を両立する「電気制御と機構の複合設計」です。同じハンディーファンでも、その構造は大きく異なります。
分解して観察すると、量産コストと性能のバランスを取るための工夫が随所に見られ、製品設計やコストダウンのヒントが数多く詰まっていることが分かります。 (次回へ続く)
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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