それでは自動車業界において、AWSのAIソリューションはどのように活用されているのだろうか。会見では「新たなクルマ体験とサービス提供」と「車両開発プロセスの変革」に分けて事例が紹介された。
「新たなクルマ体験とサービス提供」で紹介されたのはホンダの2つの事例だ。1つは、EV(電気自動車)充電の体験価値向上を目的としたルートプランニングに、Amazon Bedrockと「Amazon IoT Core」を活用した事例だ。EVの大きな課題の一つが、バッテリー充電の不安だ。想定外の遠回りで電力を消耗したり、行先の充電器が故障で使えなかったりといった事態があっても対応できるようなルートプランニングがあれば、EV所有の不安材料を和らげることができる。
そこでホンダは、Amazon IoT Coreを用いてリアルタイムで車両データを収集し、過去の行動履歴や嗜好性などのデータと合わせて、Amazon Bedrockを用いたAIによりパーソナライズした最適なルートを提案する機能を開発している。この事例を背景にAWSとホンダは2025年1月、次世代SDVの実現と生成AIを活用した充電体験向上のサービス開発で協業することを発表した。
もう1つの事例は、コールセンター対応のチャットbotだ。消費者向けの製品やサービスを提供する企業にとって顧客からの問い合わせに対応するコールセンターの効率化と品質改善は大きな課題である。ホンダもこれまで、1つの問い合わせチケットの対応に数日間を要したり、回答内容が担当者の経験に基づくため回答品質にばらつきがあったりした。
そこでAWSのGenAIICは、問い合わせに対するチケットの作成、参照すべき情報やログデータなどを取得するためのAPIリクエストやSQL文の作成と実行、これらの処理をサブタスクとするLLM(大規模言語モデル)に基づくAIエージェントを開発した。そして、このAIエージェントによって問い合わせに対する正しい回答が生成できるかを検証した。実際に、8つのユースケースで平均70%以上の確率で適切な回答が得られるとともに、数分で問い合わせへの対応を完了させられたという。つまり、数日掛かっていたこともある対応が、数分で完了するようになったわけだ。
一方、「車両開発プロセスの変革」でもさまざまなAI適用が検討されている。自動車の開発プロセスはV字モデルで表されることが多い。V字の左側では、自動車メーカーが策定した仕様から詳細設計に落とし込み、V字の右側では詳細設計から各コンポーネントやシステム、完成車など対象を広げながら開発と検証を進めていく。
AWSジャパン 自動車事業本部 プリンシパル ソリューションアーキテクトの梶本一夫氏は「V字モデルで左上に位置する要件管理、一番底にあるコード生成、右上に位置するV&V(検証と評価)において、自然言語認識に強い生成AIの力を生かした自動化に向けた取り組みが進んでいる」と語る。
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