エアコン室外機フロン自動回収システム開発 業界初を実現した3つの技術とはリサイクルニュース(2/3 ページ)

» 2025年06月02日 06時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

3つの技術ポイント

 フロン自動回収実証システムのポイントは「センシング技術」「独自の回収カプラ」「リークチェック(漏れ検知)機能」だ。

 まず「センシング技術」では、3Dや2Dのカメラで取得した画像により回収カプラの接続箇所である継手を自動検出する。多様なメーカーのさまざまな継手形状や位置のセンシングにも応じる。継手の形状や位置を3Dカメラで検出し、回収カプラを取り付けるロボットアームの移動経路を生成する。2Dカメラは、六角穴が付いているバルブの開閉ねじの位置を高精度にセンシングする。この六角穴に、ロボットアームのハンドに装着された六角レンチを挿入して回し、バルプを開閉する。

フロン自動回収実証システムの「センシング技術」 フロン自動回収実証システムの「センシング技術」[クリックで拡大] 出所:パナソニック くらしアプライアンス

 パナソニック くらしアプライアンス社 ビジネスプロセスイノベーション本部 製造革新センター 拠点強化推進部 自働設備推進課 課長の渡辺利幸氏は「フロン自動回収実証システムが3Dカメラの画像からさまざまな機種の継手を検出できるのは、さまざまな室外機の継手画像をグルーピングしたデータがあるからだ。これらを教師モデルとして対象室外機の継手と照合することで、回収カプラの迅速な取り付けを実現している」と話す。

 「独自の回収カプラ」は、挟み込みのロックを用いて継手を把持し接続を行えるような仕組みになっている。この仕組みであれば、ロボットアームの機械精度が高くなくてもしっかりと接続できる。従来のカプラはシール方向へ押し付けてねじを嵌合させるため、ねじ山次第でかみ合わせ不良が出やすかった。

フロン自動回収実証システムの「独自の回収カプラ」 フロン自動回収実証システムの「独自の回収カプラ」[クリックで拡大] 出所:パナソニック くらしアプライアンス

 「リークチェック(漏れ検知)機能」は、回収カプラが正しく接続されているかを検査し、3つの検知機能「圧力センサー」「精密流量計」「ガス検知器」でフロンガス漏えいを防ぐ。圧力センサーは、到達圧力を検知し1分当たり数リットル(l)の大きなリークを検出する。精密流量計は経路内の空気流れを検知し1分当たり10mlの微小リークをセンシング。ガス検知器は、フロンガス回収開始時に万が一の漏れを検知し、検出された際にはフロンガスの抽出を中止する。

 検査フローは以下の手順で行う。まずカプラを室外機に接続しエアーで加圧する。次に圧力センサーで到達圧力を検知。続いて精密流量計で流量を検知する。その後、エアーを抜きフロンガスを回収。フロンガスの回収中にガス検知器でガス漏れがないことを確認し、問題ないようなら抽出を継続する。

フロン自動回収実証システムの「リークチェック(漏れ検知)機能」 フロン自動回収実証システムの「リークチェック(漏れ検知)機能」[クリックで拡大] 出所:パナソニック くらしアプライアンス
パナソニック くらしアプライアンス社 ビジネスプロセスイノベーション本部 製造革新センター 拠点強化推進部 自働設備推進課 課長の渡辺利幸氏 パナソニック くらしアプライアンス社 ビジネスプロセスイノベーション本部 製造革新センター 拠点強化推進部 自働設備推進課 課長の渡辺利幸氏

 両社は3台の室外機を1セットとしてフロンガスの同時回収を行う自動回収システムの開発を進めている。このシステムを2025年末~2026年初の期間で再商品化棟に導入し、同年の3月末までに稼働を開始する。

 渡辺氏は「室外機からのフロンガス回収は手作業で1台当たり1分52秒かかっている。フロン自動回収実証システムは1台当たり7~8分かかるが、2026年に稼働を開始するフロン自動回収システムは1台当たり1分22秒なので手作業と比べて30秒短縮する。フロン自動回収システムは8時間操業で1日に300台処理可能な性能を持つ。ただし、前工程がこの速度に対応できないため、フロンガス自動回収システムの導入で増える1日当たりの処理台数は200台だ。再商品化棟では現在、3人で1日当たり620台のフロンガス回収を行っている。つまり、この手作業と新設するフロンガス自動回収システムのラインを組み合わせて処理台数を820台とする」と語った。

 今後はフロン自動回収システムの導入により増員を抑えて処理能力を1.3倍に高める他、従業員の経験や勘に頼らず安全/安定的に回収できる体制を構築する。加えて、フロン自動回収実証システムはR-410Aのフロンにしか対応していないため対象フロン種の拡大を推進するとともに、変形した室外機にも対応できるように改良を進める。

 また、当面はパナソニックグループ内で同システムを展開する見込みだが、将来は外販も視野に入れている。

連続高速処理を実現するフロン自動回収システム 連続高速処理を実現するフロン自動回収システム[クリックで拡大] 出所:パナソニック くらしアプライアンス

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