開発期間を短縮する効率的なプロセスで新型「スカイライン」を投入電動化(2/3 ページ)

» 2025年05月14日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

固定費と変動費を削減するRe:Nissan

 現状では、販売コストなど変動費が増加するとともに、固定費が売上高で賄えない水準で高止まりしているという認識だ。これを踏まえて、経営再建計画の「Re:Nissan」ではコスト構造の改善や市場/商品戦略の再定義、パートナーシップの強化に取り組み、2026年度に自動車事業の営業利益とフリーキャッシュフローを黒字化することを目指す。

 変動費と固定費は2024年度比で合計5000億円削減する。これまでの目標に対し、変動費は500億円増の2500億円、固定費は1000億円減の2500億円の削減を計画している。

コスト改善目標の見直しの経緯[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 変動費は「変動費革新プログラム」の実行やエンジニアリングとコストの効率向上に取り組む。エグゼクティブコミッティの直下に「TdC(Total delivered Cost)トランスフォーメーションチーフ」を置き、研究開発や購買、生産、TCS、コストコントロールの各部門から最大3000人が参加する「迅速対応チーム」が活動する。

 具体的には、基準やスペックの改定や標準部品の採用、仕入れ先の集約、仕様の削減、中国のベンチマークや現地生産部品の活用など複数のテーマで部品や車両を見直していく。より少数のサプライヤーから多くの部品を調達する他、非効率さを排除するために従来の基準を再検討する。こうした取り組みにより、2026年度に750億円の削減効果を見込む。サプライヤーへの影響など詳細については明かさなかった。

変動費削減に向けたチーム体制[クリックで拡大] 出所:日産自動車

 変動費改革は、先行開発や2026年度以降のプロジェクトの一部を一時停止して取り組む。開発期間を短縮する新開発プロセスの適用により、各プロジェクトの市場投入時期は遅れないとしている。

 エンジニアリングコストの削減では、グローバルで研究開発のリソースを合理化して時間当たりの労務費を20%減らす。部品の種類は70%減、プラットフォーム数は2035年度までに足元からほぼ半減の7種類とし、スリム化を図る。開発期間は30カ月に短縮する。こうした新しいプロセスで、「スカイライン」の新モデルや、グローバルモデルとなるCセグメントのSUV、インフィニティブランドのコンパクトSUVを開発する。

固定費削減の施策は

 固定費は、2027年度までに工場数を17カ所から10カ所に統廃合することで削減していく。車両の生産拠点とパワートレイン工場を統合する他、配置転換やシフト調整、設備投資の抑制や投資効率の向上を進める。対象となる具体的な拠点は明らかにしなかったが、日本の拠点も検討対象に入っている。

 北九州市でリン酸鉄リチウムイオン電池の新工場建設を中止したのもこの固定費に関する取り組みの一部だ。ルノーとの協力によるインド事業の再編や、ピックアップトラックの生産をアルゼンチンからメキシコに集約すること、タイの生産拠点の集約も固定費削減の一環だ。

 これにより、中国を除く連結工場で稼働率を高める。生産能力は2026年度までに80万台、2027年度までに20万台を削減し、250万台に引き下げる。50万台程度の余力や、パートナーの40万台の生産能力によって需要の増加にも対応する。

 人員削減は当初9000人としていたが規模を拡大し、2027年度までに契約社員も含めて合計2万人を削減することとした。内訳は生産が65%、販売管理が18%、研究開発が17%となる。

2027年度に向けた取り組みのロードマップ[クリックで拡大] 出所:日産自動車

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