デジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第27回は、受託加工業における新たなブランディングの考え方、「マルチアングルブランディング」について取り上げる。
企業が持続的に成長するには、“なぜ自社が選ばれるのか”という理由を明示し、市場に伝える力(=ブランディング)が不可欠である。中でも重要なのは、単なるイメージ戦略ではなく、「機能的価値」と「選定される必然性」を結び付ける設計である。
なぜなら、受託加工業を取り巻く環境は、技術力や品質だけではもはや差別化が難しくなっているからだ。市場が成熟し、競争が激化する中で、明確な「選ばれる理由」を示せなければ、たとえ高い技術力を有していても埋もれてしまう時代に突入している。
そこで今回は、受託加工業における新しいブランディングの考え方として「マルチアングルブランディング」を紹介し、それがどのように競争優位を生み出すのかを解説する。
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従来は、「価格が安い」「品質が高い」「納期が早い」といった特定の強みを打ち出すことで差別化を図ってきた。しかし、こうしたメッセージは類似企業でも採用されており、他社との差異を印象付けづらくしている。また、特定の市場やニーズに絞るとリスクが高く、戦略的柔軟性にも欠ける。
マルチアングルブランディングとは、1つの訴求軸に縛られず、企業が持つ複数の強みや技術をさまざまな視点(アングル)から打ち出すアプローチである。
市場が多様化する中で、たった1つのメッセージだけではカバーし切れないニーズが増えている。そのため、企業が保有する多様な技術や設備を切り口ごとにブランディングを行い、それぞれの顧客層に向けて最適なメッセージを発信することが重要である。
1つに集約しようとすると抽象度が高くなり、訴求力が弱まってしまうため、あえて複数の軸を設定し、それぞれを明確に打ち出すことでより幅広い顧客のニーズに的確に応えることが可能となる。
ある樹脂切削業者を例に挙げると、以下のような訴求軸を作ることができる(図1)。
これにより、それぞれのニーズに対応した適切なブランドメッセージを発信することが可能となる(以下、その一例)。
WebマーケティングやSEOを活用し、ターゲット層に合わせたコンテンツや広告を展開することで、選定候補に入りやすくなる。この段階でのブランディングの目的は、選定候補に入ることや第一想起を促すことである。
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