自社が持つ複数の技術や強みを多角的に打ち出すことで、顧客に認知してもらいやすくなる。しかし、ユーザーが最も気にしているのは「どのような価値を提供してもらえるか」という点である。市場やユーザーによって顧客の評価やニーズはまちまちのため、自社の強みを“相手目線”で再構築する必要がある。これを「フィードバックコンセプト」と呼ぶ。
以下は、ユーザーが企業を選ぶ際に主にチェックするポイントの例である(図2)。
これらの評価軸は、発注側のニーズや目的によって優先度が異なる。また、マルチアングルブランディングでは、受注側が想定している提供価値とユーザーが実際に求める価値が食い違う可能性がある点にも注意が必要である。
例えば、特定の領域や市場において「価格が安く、納期が早い」と自社が想定していない評価をされた場合には、それを一つの特徴として捉え、特定の市場セグメントでポジションを再定義することが求められる。
例えばIT業務において、A君は「作業スピードが速く」、B君は「納期厳守に長け」、C君は「大量のタスクをこなすのが得意」だとする。このような特徴(速さ/納期厳守/大量対応)は本人の意思にかかわらず、“個人ブランド”として周囲に認識される。顧客や上司は、案件の特性に応じて「スピード重視ならA君」「納期が厳しいならB君」というように役割を振り分けるため、結果としてブランドが自然に確立されるのである。
これは企業のサービスや製品にも同様に当てはまる。「ITサービスなら○○社」とひとくくりにするのではなく、「スピード重視のプロジェクトには○○社」「納期厳守が必須の案件には××社」といった具合に、顧客のニーズに応じた選択が“役割ベースのブランド化”を促進する。すなわち、それぞれの特徴を明確に打ち出し、実績を重ねることで、周囲からのブランド評価は自然と高まるのである。
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