東京理科大学は、銅基板上の薄膜生成過程における枝分かれ現象のメカニズムを解明した。数学、物理、機械学習を組み合わせた手法により、樹枝状組織の成長プロセスと自由エネルギーの関係を明らかにした。
東京理科大学は2025年4月8日、銅基板上の薄膜生成過程における、枝分かれ現象のメカニズムを解明したと発表した。岡山大学、京都大学、東北大学、筑波大学との共同研究による成果で、トポロジーと自由エネルギーを活用したAI(人工知能)解析により、薄膜生成時の樹枝状組織を定量的に解析する手法を開発した。
Beyond 5Gに向けた次世代の電子デバイスでは、テラヘルツ(THz)周波数帯で動作する高い電荷移動度が求められている。特に、グラフェンやボロフェンなどを銅基板上に複数層重ねた多層膜構造デバイスは電荷移動度が高いことで知られ、その性能を引き出すには、多層膜に加えて触媒となる銅基板上の薄膜の品質も重要となる。
今回の研究では、銅基板上で枝分かれ(樹枝状)するように成長する薄膜生成の過程を、数学的なトポロジーと物理的な自由エネルギー、ML(機械学習)を組み合わせて解析した。まず、結晶成長プロセスを計算するフェーズフィールド法を用いて樹枝状組織をシミュレーションし、6万7725枚の画像データを生成した。
次に、トポロジーの新概念となるパーシステントホモロジーを用いて樹枝状組織を分析し、パーシステント図(PDデータ)として特徴量を抽出。MLの主成分分析(PCA)で樹枝状成長の連続的な動きを2次元にマッピングしたところ、特徴的な2つの評価軸(PC1とPC2)を取得した。このマッピングは枝分かれの成長と自由エネルギーの変化の関係を表しており、データ空間で薄膜生成時の組織構造とプロセスを結び付けることに成功した。
また、2つの評価軸と自由エネルギーの変化を関係付けて解析すると、樹枝状構造の分岐現象と密接に関わっており、得られた特徴量は枝分かれを記す隠れた特徴量だと分かった。これにより、データ空間上で枝分かれが起こる条件を示すことが可能になった。
薄膜生成時の枝分かれ現象を定量的に解析する手法により、そのメカニズムが明らかになったことで、高品質な薄膜作製につながることが期待される。さらに、数学、物理、AIを組み合わせた解析手法(マテリアルインフォマティクス)は、新規材料の作製や最適化への応用も期待される。
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