シリコンデバイスでは、インバーター向けに逆導通IGBTを開発している。IGBTとフリーホイールダイオードを1チップで構成した素子により、パワー半導体のチップ面積を削減する。放熱面積が大きく熱抵抗を低減するため、システムの小型化や低コスト化に貢献できる。
ただ、同一素子内にIGBTとフリーホイールダイオードがあることでそれぞれの設計最適化が課題となる。東芝は、フリーホイールダイオード動作時にIGBT側からの過剰な正孔の注入を抑制することでIGBTの特性を損なわずにフリーホイールダイオードの特性を改善させていく。
E/Eアーキテクチャは機能ごとにECU(電子制御ユニット)が分散する構造から、機能ごとにECUを集約するドメイン型、そして、ECUがある部位ごとにECUをまとめるゾーン型に移行していく見通しだ。これは、配置や配線を最適化することでワイヤハーネスの使用量を抑えたり、無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)をしやすくしたりする狙いがある。また、ソフトウェアとハードウェアは分離した開発に徐々に移行していく。
アーキテクチャが変わりつつあるが、車両の高機能化や電装化によってモーターを使うアプリケーションは車内で増加している。現在、モーターは車両1台当たりに40個弱搭載されているが、2030年ごろに向けて1.5倍に増加していくと見込まれている。これに伴い、モーターに必要な低耐圧MOSFETやモータードライバICも搭載が増えている。
低耐圧MOSFETに関して東芝は、競争力の高い新商品を続けて市場投入していく計画だ。東芝では、幅広い耐圧やさまざまなパッケージングで500製品をラインアップに持つ。いずれもノイズが出にくく使いやすい設計としている。「世界トップクラス」だというオン抵抗とスイッチング損失の低さを強みにする。
開発中の第11世代では、現在量産中の第8世代品と比べて40%のオン抵抗を低減する。高効率な動作は省エネや機器の発熱低減に貢献するという。
車載向けのMOSFETは微細加工技術を活用して継続的にオン抵抗を低減していき、80Vの高耐圧品はスイッチング損失低減と両立する。2026年に市場投入する製品では、40V向けは抵抗を30%削減、80V向けでは抵抗を60%低減する。
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