ニデックは、牧野フライス製作所から提出された3回目の質問状に対する回答を発表した。
ニデックは2025年3月17日、TOB(株式公開買い付け)の実施を予告している牧野フライス製作所が、同月11日に提出した3回目の質問状に対する回答を発表した。
買い付け価格を1万1000円と決定した際に想定したニデック、牧野フライスに生じるシナジーなどに関する質問について、ニデックは「提案価格は、市場価格を基に、株主の皆さまに十分なプレミアムをのせた金額にて提案させていただいた。事業計画に関しては、本取引の成立後、共に作っていきたいと考えている」「グループに入っていただくことで創出されるシナジーは、本取引後に精緻化していく予定であり、今回の提案価格は(牧野フライスの)次年度以降の計画に基づいて算出、決定したものではない」と回答した。
牧野フライスが2025年2月12日に発表した新事業計画に対して、ニデックが「実現は不確実」などとしてTOBへの応募を呼び掛けたことに関連して、その具体的な理由、想定売上高や営業利益などを求めた質問に対して、ニデックは「公開買い付けに応募する場合と、応募せずに継続保有する場合のいずれが株主の皆さまにとって有利であるかの考え方を説明した。継続保有が有利な結果となるためには、株価が提案価格以上になる必要があること、それが達成されるための条件を一般論として説明した。新事業計画の実現に向けた個別の条件について述べたものではない」と答えた。
共同購買の対象範囲に関する質問には、ニデックは「過去に買収してきた会社がそれぞれNC装置メーカー等と良好な関係を築いてきているため、サプライヤーの変更を指示したことはない。共同購買については、傘下の工作機械会社各社が情報交換を密に行っており、その情報をもとに各社が『独自の戦況判断』を継続して実施している。共同購買は統合による調達シナジーの1つだが、仕様が異なるものを無理に共通化して調達するものではない」とした。
仮にTOB成立後、ニデックの競合となる顧客が取引を継続しなくなるディスシナジーについては、「過去には、買収先の顧客から、グループに属する企業と競合関係にあることを理由として、今後の取引を中止すると連絡されたこともあったが、その都度、機械事業本部の経営陣が、買収先の顧客の責任者の方々を訪問し、丁寧に説明して理解いただき、取引を継続、再開していただくケースが多かった」と回答した。
牧野フライスが、ニデック傘下に入れば取引を継続できないとする顧客が、年間総売上高の10%に上ると明かした件に対しては、「どのように説明されたか分かりかねるため、適切なタイミングで、ぜひ当社からも直接に対象企業各社のトップ、責任者の方に説明させていただき、理解を得るべく努めたい」と答えた。
中国金型工業協会が2025年1月に、中国政府の商務部および国家市場監督管理総局国家独占禁止局の関係部署に対してニデックによる牧野フライスの買収が中国の金型業界に金型製造設備のサプライチェーンへの負の影響をもたらす旨を報告したとされている件については「中国にとって外国である日本企業同士のM&A案件に関して、同協会が一方的に中国の商務部および独禁法当局に負の影響をもたらす旨の報告をされたことが事実であれば極めて異例なケースである。具体的にどのような懸念があるのかを聞ながら懸念の払拭に努めていく」とコメントした。
ニデックおよびニデックマシンツール、ニデックオーケーケーなどの買収前後5年間の年間平均離職率に関しては、「2025年3月4日の面談で説明申し上げた。懸念があれば、ぜひ労働組合の幹部の方に直接ご説明する機会を設けさせていただきたい」とした。
また、ニデックは牧野フライス 代表取締役社長の宮崎正太郎氏とはまだ面談できていないことから、宮崎氏や売り上げの大きな割合を占めるMakino Asia President and CEOのNeo Eng Chong氏およびMakino(China) 総経理の朱良氏に直接説明する機会を求めた。また、回答の中でニデックは、牧野フライスが再度要請したTOB開始日の延期や買い付け下限数の引き上げについて「真摯に検討を重ねている」と述べた。
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