本連載第101回および第106回で触れたように、シンガポール政府は、2020年10月、Non-SaMDを含む消費者向けIoT(モノのインターネット)製品を対象とするサイバーセキュリティラベリングスキーム(CLS(IoT)、関連情報)を世界に先駆けて導入している。
その後EUでは2024年12月10日、IoT製品のCEマーク表示を義務付けるサイバーレジリエンス法が発効し、2027年12月11日に主要規定が適用開始となる予定である(関連情報)。また米国では2025年1月7日、連邦通信委員会(FCC)が所管する消費者IoT製品向け認証/ラベリングプログラム「U.S.サイバートラストマーク」が正式にスタートしている(関連情報)。日本では、スマートホーム、工場、ビルなど、特定分野システムの製品を対象とする「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」が、2025年3月から運用を開始する予定である(関連情報)。
他方、医療機器の領域では2024年10月16日、シンガポールサイバーセキュリティ庁(CSA)が、保健省(MOH)、保健科学庁(HSA)、Synapxe(旧IHiS)と協力して準備してきた「医療機器向けサイバーセキュリティラベリングスキーム(CLS(MD))」が、正式に導入された(関連情報)。このスキームは、CLS(IoT)の枠組みを医療機器に適用したものであり、2007年医療製品法(関連情報)や、本連載第69回で取り上げた国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)の「医療機器サイバーセキュリティの原則および実践」(関連情報)に準拠しながら、アジア太平洋医療技術協会(APACMed、関連情報)やシンガポール製造業協会医療技術産業グループ(SMF - MTIG、関連情報)からの意見を参考にして策定された。
参考までに、SaMDのサイバーセキュリティについては、HSAが2024年3月1日に公表した「ソフトウェア医療機器に関する規制ガイドライン改訂第3版 - ライフサイクルアプローチ」(関連情報、PDF)の中で、以下のような点に関する考慮事項を提示している。
上記のうち、顧客のセキュリティの文書化では、本連載第82回で触れたソフトウェア部品表(SBOM)の有効活用について言及している。
加えてこのガイドラインでは、AI(人工知能)ベースのSaMDに関する規制についても触れている。図4は、ソフトウェア医療機器のAIモデルの具体例を示したものである。
そして、以下のような点について言及している。
シンガポールには、グローバル医療機器企業のアジア拠点が集中しており、シンガポール政府当局も、海外の医療機器サイバーセキュリティ規制への迅速な対応を進めている。加えて、クラウドコンピューティングの領域では、2025年2月12日、アマゾンがシンガポール事務所をAWSアジア太平洋ハブとして拡張することを発表するなど(関連情報)、AIをにらんだICT基盤の強化策が進んでおり、海外メドテックスタートアップ企業の誘致にも積極的だ。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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