太古氏はデータ活用において、データの質に着目した。その上で、製造現場におけるDXは現場の知見をうまく活用することがポイントになると見て、現場のベテラン社員の暗黙知などを引き出して、それをAIと組み合わせてデジタルの力で工場をよりよくすることを目指した。外部のベンダーなどに依頼すると自社のノウハウを外に出す形になるので、自分たちで使いこなす方が得策だと判断した。
具体的な取り組みとしては、研修は2パターンに分けて実施していることを挙げた。社内研修はノーコード/ローコードを使いながら、ビジネスインパクトを出している。また、会社の職制外の組織である技術研究会を利用してブログラミングを学んでもらっている。
AIについては、データサイエンティスト協会の定義に沿って、製造現場のスタッフがAI活用の中核となる人材づくりを行っている(2025年までに300人育成が目標)。その中でベテラン社員に対してAIに対する体験会なども開いている。実際にAIに触れることで認識も深まり、結果的によりAIが普及できるような環境の醸成につながった。
一方、現場の若手社員には、通常の業務も忙しく学ぶ時間も限られることからノーコード/短期間で知識が身に付くようにサポートし、8回の講義で事例が作れるようなスケジュールとしている。
自動車のメーカーの技術研究会で機械学習を勉強する分科会を設けて、Kaggleといわれるコンペティションなども行った。業務外の活動で日本ディープラーニング協会のG検定やE資格などの各種資格を取得するような取り組みも実施している。
仲間づくりでは、各部署で困っていることのヒアリングを行った。その中で挙がったアイデアを、実現性と収益性という2つの軸で検討し、データの有無、上司の理解、技術面での可能性などを考慮して、実現性の高いものから取り組んだ。
さらにAI、データ分析、可視化、アプリケーション開発などの相談も、オンラインで受け付けている。この他、工場のメンバーに特化した伴走支援型のOJT(On the Job Training)の研修も実施。この研修では先に与えられた課題に取り組み、その経過や難しいポイントを把握した上で、工場の他のメンバーを誘導するというものだ。
現場で働くスタッフが自分たちで作成することで、導入のハードルを下げることになり、導入後に使いにくい点が発生しても、自分たちの手で改善できるというメリットがある。
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