経産省が描く経営課題/業務変革課題を起点とした全体最適の製造DXMONOist DX Forum 2024(1/2 ページ)

アイティメディアにおける産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japanは、オンラインセミナー「MONOist DX Forum 2024-製造業の革新に迫る3日間-」を開催した。本稿ではその中から、「SMDG:スマートマニュファクチャリング構築ガイドラインとは」と題した講演の一部を紹介する。

» 2025年02月25日 08時00分 公開
[長町基MONOist]

 アイティメディアにおける産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japanは、製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに推進するためのオンラインセミナー「MONOist DX Forum 2024-製造業の革新に迫る3日間-」を2024年12月11~13日に開催した。

 本稿ではその中から、「SMDG:スマートマニュファクチャリング構築ガイドラインとは」と題して経済産業省 製造産業局 製造産業戦略企画室 室長補佐の稲垣敦史氏と日本能率協会コンサルティング デジタルイノベーション事業本部 本部長 シニア・コンサルタントの毛利大氏が行った講演の一部を紹介する。

課題を総合的に捉え、進められる人材やノウハウが不足

 製造業におけるDXの論点は多岐にわたり、構想、着手、成果創出に至るまで苦慮する声が数多く聞かれる。そうした課題解決の一助を目指して、2024年6月28日にスマートマニュファクチャリング構築ガイドラインの初版がリリースされた。

 講演では企画立案元の経済産業省と、事業受託者である日本能率協会コンサルティング(JMAC)の担当者が、スマートマニュファクチャリング構築ガイドラインの概要、使い方、製造事業者からの反応などを解説した。

 製造業者には、解決したい経営課題や業務変革課題などを特定しないままDXを推進し、その結果、課題解決に寄与しないというケースが多くみられる。

 こうした状況に対処するためには、経営層があるべき課題を特定し、そこを起点として、各部門が連携して最適化を目指すという取り組みが求められる。その際に、各部門の担当者にとって共通言語となり得るものが必要となる。それが今回策定したスマートマニュファクチャリング構築ガイドラインだ。

スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン[クリックでWebサイトへ]出所:NEDO

 経営課題にはQ(品質管理の強化と不正防止)、C(原料費、物流などの高騰やコストダウン要求)、D(短納期要求への対応)などにかかわるものが多い。また、業務変革課題にはエンジニアリングチェーン、サプライチェーンなどにかかわる的確なニーズ、シーズの把握、負荷変動を抑え、人々のスキルに依存しないモノづくりなどが見受けられる。

 こうした課題の大半は、特定の部門だけでなく製造プロセス全体を俯瞰した全体最適を図ることにより解決に至る。どこかの1部門だけが取り組んでも解決にはつながらない。例えば、品質の問題では設計開発部門、調達部門なども巻き込んだ改革が重要になる。

 こうした懸案に対して、アンケートを実施した結果、現在の日本の製造事業者のデジタルへの取り組みとしては「個別工程の改善には十分に成果が出ている」「および一部改修、計画中」などの回答が9割弱を占めた。一方、製造機能の全体最適に対しては、「取り組んでいない」以外を足し合わせても70%程度にとどまっている。

 このような状況では、「特定の部門だけでは解決しきれない課題に対して、取り組み切れず根本的な解決にはつながりにくい」(稲垣氏)。これらの課題解決でボトルネックとなっているのは主要部門を総合的に捉えられる人材が不足していることや、進め方のノウハウが不足している点だ。

経済産業省の稲垣敦史氏 経済産業省の稲垣敦史氏

 データを有効的に利用していくためには、標準化、一元化が必要となる。その際にデジタルを扱うツールとして、ERP(基幹業務システム)、PLM(製品ライフサイクルマネジメント)、MES(製造実行システム)などを活用していくことが重要だ。ただ、これらを総合的に捉えて改革をしていくことができるDX推進人材や手法といったものが不足している。「このため、われわれとしては、製造プロセス全体を俯瞰して最適化を図っていくためのガイドラインとしてスマートマニュファクチャリング構築ガイドラインを策定した」と稲垣氏は述べる。

 策定するに当たりポイントとしたのは、生産現場だけでなく開発設計、調達、営業など周辺の機能を含めた製造プロセス全体を俯瞰した全体最適を目指したという。また、経営課題、業務変革課題を起点としての改革についての情報もまとめた。さらに、単にまとめるだけではなく読者が全体像を見ながら、着実に具体的な課題の選択や、プロジェクト設計に移れるようなレファレンスを整理している。

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