2024年度通期の業績見通しは、前提となる為替レートを見直したことに伴い、売上高を前回予想比で400億円増の4兆7600億円(前年度比1.2%増)、営業利益を同300億円増となる4300億円(前年度比8.2%減)、当期純利益を同300億円増の3300億円(前年度比14.3%減)に修正した。想定為替レートは1ドル=149円から153円に見直し、296億円のプラスとなる。
2024年度通期の営業利益は、為替影響で前年度比934億円の増加を見込んでいるが、販売台数の減少や販売奨励金のさらなる増加などが減益要因となる。2024年度(2025年3月期)通期の見通しでは、生産台数を前年度比2.0%減の95万台、連結販売台数は同2.7%減の95万台で据え置いた。
米国向けの販売奨励金は前年度から1台当たり850ドル(約13万円)増となる2050ドル(約31万円)となり、グローバルでの販売奨励金総額は710億円の増加となる見通しだ。また、前年度と比べて電動化技術など研究開発費で290億円、サプライヤーの労務費やエネルギー費などの負担軽減で188億円の減益要因も見込んでいる。
2025年は、スバルのEV自社生産に向けて矢島工場(群馬県太田市)の工事が本格化する。矢島工場にある2本の生産ラインのうち、1本を半年間止めて工事を行う。
1ラインの年間生産台数が約20万台なので、単純計算では10万台分の影響が出る。それを日米の生産ラインで吸収すべく対策を進めている。「生産ラインは日本に3本、米国に2本あり、工事で停止しない残りの4本で10万台分全てをカバーするのは難しい。今、2025年度の見通しを検討しているところだ」(水間氏)。生産の制約が発生するものの、米国市場の販売が堅調であることから2025年暦年の米国の小売販売で67.5万台を目指す。この目標は「矢島工場の生産ラインが半年止まっても対応できると考えている」(水間氏)。
米国での現地生産拡大に向けて、以前から米国向け「フォレスター」の生産を米国に移管することを計画していた。それ以外の車種については、さまざまな選択肢を検討しているという。
トランプ政権への対応について水間氏は「販売の7割を占める主力市場なので言うまでもなく非常に注目している。経営環境が大きく変動する可能性は常にある。スバルブランドを磨いていいクルマを作っていく方針をブレさせずにいきたい。毎日情報が変わってくるので、さまざまなシナリオを検討しながら対策を進めていく」とコメントするにとどめた。
トランプ政権がこれまでのEV政策の撤回に言及していることに関しては、政策に言及する立場ではないと前置きした上で水間氏が次のように語った。
「需要自体は緩やかでスローな成長に変わってきているが、政権がどんな形であれ最終的にEVの需要は市場が決めていくのだろう。使い方に応じてEVの需要は(政策の影響で消えることなく)確実に残り、成長していくとみている。家庭で充電して、20~80%の電池残量で移動することを考えると、100~150マイルの運転であれば急速充電は必要ない。高速道路の合流がとても楽で、使い勝手もいいとなれば、日常づかいにEVが選ばれる可能性は高いのではないか。米国では9割の家庭が自動車を複数保有している。2~3台、場合によっては4~5台が1つの世帯にある。その中の1台がEVになるのは普通に起こりうる光景だ。自信をもってEVの開発を進め、生産に入っていく」(水間氏)
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