写真は1980年に製造されたニッサンHR型の自動繰糸機。最先端技術として世界へ輸出されるようになった機械です。写真は製糸工場の主要工程である「繰糸(そうし)」に用います。煮繭から糸口を取り出し、数本の繭糸を合わせて目的の糸の太さの生糸を製造する作業です[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
土屋さん この機械は自動車メーカーの日産自動車が作った1980年代の自動繰糸機(じどうそうしき)です。自動繰糸機の開発が始まったのは昭和21年からで、戦後の復興とともにありました。
「NISSAN」のエンブレム。富岡製糸場と同じ「ニッサンHR型」の自動繰糸機をメンテナンスしながら今でも大切に使い続けています[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
土屋さん こんな髪の毛の数分の1の繭糸を、ほとんど自動で生糸をひくっていうのは、人類にはできないといわれるぐらい難しかったんですね。でも、日産をはじめとした数社がチャレンジをして、結果的には日産の機械が一番性能が良くて、日本の製糸工場で使われる自動繰糸機の約8割は日産の製品になりました。
その後は輸出されて、世界のシルク産業を支える技術になりました。世界のシルク産業は今でも日本の技術革新で生まれた製糸技術が支えていると言っても過言ではありませんね。
生糸の太さを表す単位は「デニール」。繭糸1本の太さは約3デニールと言われ、髪の毛の4分の1から5分の1ほどの細さだそうです。1つの繭から1本の糸口を出し、目的の生糸の太さになるよう、繭糸を複数本合わせて1本の生糸にしていきます[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
――碓氷製糸は難しいオーダーにも対応して生糸を作っているそうですね!
土屋さん 工場長の今村さんがこういう部品を作ってくれるおかげで、生糸も14デニール、21、27、31、42、55、60、110、180、200、400といろいろな太さの糸を作れます。
オレンジ色と白の繊度感知器(せんどかんちき)は今村工場長のお手製。糸が目的の太さより細くなると繭を追加するように知らせてくれる感知器です。繭から出る生糸1本の太さは約3デニール。400デニールの太さの生糸を作るには、繭にすると150粒(りゅう)くらい必要になり、生糸の引っ張る力はすごく強くなります。それをきちんとコントロールできるように機械を改造して、400デニールの生糸を作れるようにしました。これはかなり難しい技術だそうです[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
土屋さん さらに、ネットロウシルクや、ふい絹という糸があり(※下記画像下段参照)、ねじり括仕立ての和装用出荷と、ボビン仕立ての洋装用出荷もできます。ものすごくきめ細かくお客さまのご要望に答えられる工場であり続けていること、こういう仕組みを可能とする技術者と、それを支える多様な機械なくしては、碓氷製糸は生き残れなかったですよ。
ネットロウシルクとは網状の特殊な生糸のこと。こちらは国産生糸100%で作ったネットロウシルクのボディータオルで、碓氷製糸オリジナル商品「天使の翔(つばさ)」[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞
ふい絹とは、繭から低速で糸をひいた、太さのある生糸で、いにしえの風合いが特徴です[クリックして拡大] 出所:ものづくり新聞