名古屋大学らは、負イオンビームの動きを詳細に調べる実験を実施し、高周波振動現象を観測した。また、振動現象がビームを広げてしまう原因であることやその抑制方法も明らかにしている。
名古屋大学らは2025年1月17日、負イオンビームの動きを詳細に調べる実験を実施し、高周波振動現象を観測したと発表した。また、同振動現象がビームを広げてしまう原因であることや、その抑制方法も明らかにしている。名古屋大学、核融合科学研究所、長岡技術科学大学、鳴門教育大学、東北大学、マックスプランク研究所の共同研究による成果だ。
同研究グループは、核融合科学研究所の開発用負イオン源(NIFS-RNIS)を使い、負イオンビームの動きを詳細に調査した。ITER(フランスに建設中の磁場閉じ込め核融合装置を用いた核融合燃焼プラズマの実験プロジェクト)用の高周波放電負イオン源の疑似環境を作り出すため、静かな放電が可能な直流放電型負イオン源に弱い高周波摂動を加えて、負イオンビームの高周波振動現象を観測した。
このビームの振動現象は、ビームを集束させる静電レンズが高周波の影響で振動するために発生すると考えられるが、プラス(正)イオンビームでは観測されなかった。つまり、振動現象は負イオンビーム固有の現象であり、ビームを広げる効果があるため、ITER用の負イオンビームを広げる原因となっている可能性がある。
そこで、より詳細に負イオンビームの振動現象の特性を調査したところ、高周波の周波数を下げて、パービアンス(パラメーターの最適条件を満たす運転領域)でビームを発生させることにより、負イオンビームの振動現象を抑制できることを示した。
負イオンビームは、正イオンビームと比較して生成が難しく、実用化が限定的で、産業への応用が大きく遅れている。今回の研究成果は、負イオンビームの広がりを自在にコントロールする技術にも展開でき、負イオン制御技術の高度化に貢献する。共同研究チームは、同技術の特許を出願しており、負イオンビームの広範な応用研究にも展開していきたいとしている。
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