名古屋大学発ベンチャーで車載ソフトウェア標準であるAUTOSAR仕様のソフトウェアプラットフォーム(SPF)「Julinar」の開発を手掛けるAPTJが解散したことが明らかになった。同社 代表取締役会長兼CTOを務めていた名古屋大学情報科学研究科附属組込みシステム研究センター長の高田広章氏が発表した。
名古屋大学発ベンチャーで車載ソフトウェア標準であるAUTOSAR仕様のソフトウェアプラットフォーム(SPF)「Julinar」の開発を手掛けるAPTJが解散したことが明らかになった。同社 代表取締役会長兼CTOを務めていた名古屋大学情報科学研究科附属組込みシステム研究センター長の高田広章氏が、2022年11月16日に「EdgeTech+ 2022」(同年11月16〜18日、パシフィコ横浜)で開いたTOPPERSプロジェクトの会見で発表した。
APTJは、欧州のソフトウェアベンダーが有力なAUTOSARのSPFについて、それらに対抗できる国産SPFを開発/販売することを目的に2015年9月に設立された。TOPPERSプロジェクトで開発したAUTOSAR準拠のOSカーネル「TOPPERS/ATK」をはじめとする車載関連の技術開発成果を活用したJulinarの開発と販売を行っていた。
2016年5月には、富士ソフト、キヤノンソフトウェア、サニー技研、名古屋大学・東海地区大学広域ベンチャー1号投資事業有限責任組合などを引受先とする総額約8億5000万円の第三者割当増資を実施して資本金を10億円に増資しするとともに、AUTOSAR仕様をベースとする車載制御システム向けSPFの共同研究開発契約を豊田自動織機、ジェイテクト、東海理化電機製作所、スズキと締結するなど活動を拡大。2019年11月には日産自動車の「ローグ」、2022年3月には同社の新型EV(電気自動車)「アリア」に、Julinarを搭載するジェイテクトのEPS(電動パワーステアリング)が採用されたことなどを発表していた。
これらの採用実績はあったものの、Julinarの販売が計画通りに伸びず運転資金が枯渇。この状況を受けて、2022年5月に解散を決議し、同年10月までに清算手続きを完了したという。なお、Julinarの知財は名古屋大学に有償で譲渡されている他、APTJの出資企業であるサニー技研などがJulinarの開発成果などを活用した製品展開を行う予定。また、Julinarの顧客へのサポート業務もAPTJの出資企業が継続していく方針である。名古屋大学に移管されたJulinarの知財は、今後の共同研究や人材育成で活用される。
高田氏は「オープンソースで展開してきたTOPPERSプロジェクトの技術開発成果が基になっていることもあり、可能であればJulinarの知財もオープンソースに移管する方向性を模索したい。日本の自動車業界を支えるべくAUTOSARの国産SPF開発に注力してきたが、いわゆるCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)が急激に加速する中で、自動車業界における車載ソフトウェア開発の力点が従来の制御系システムからクラウドなどと連携するより上位のシステムに移り、新たにJulinarの採用を検討するのではなく、既存の海外製SPFを継続利用するという流れになったことも影響した」と述べている。
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