美的集団を大躍進させたDX 2012年から続く長期戦略を解剖する中国メーカーのデジタルプラットフォーム戦略(2)(3/5 ページ)

» 2025年01月31日 07時00分 公開

美的DX3.0

 2018年から美的集団はDX3.0の段階に入った。産業用インターネットを導入して、IoT(モノのインターネット)と機器の相互接続を実現し、デジタル化の範囲をハードウェアにまで拡張した。これによって「ソフトウェア、ハードウェア、製造」という三位一体の製造デジタルプラットフォームを構築したのだ。

 美的集団は2018年10月に「Midea M.IoT 1.0」という自社用製造デジタルプラットフォームを中国全土でリリースし、子会社の美雲智数を通じて製造業向けに「製造知見、ソフトウェア、ハードウェア」をワンストップで提供するデジタル変革ソリューションを展開し始めた。

 Midea M.IoT 1.0が初めて実験的に導入されたのが、広州市で空調設備を製造する美的集団の南沙工場だ。同社はスマートゲートウェイテクノロジーを使って41カテゴリー、189台のデバイスを接続し、産業用インターネットをハードウェア面でも機能的に実現する仕組みを整えた。なお、美的集団は中国政府の工業情報化部が選定する「工业互联网平台集成创新应用试点示范项目(産業用インターネットパイロット実証プロジェクト)」に選ばれている。

 製造デジタルプラットフォームの導入で、南沙工場の労働生産性は28%向上し、単価は約14%削減、注文納品サイクルは約56%短縮され、原材料の在庫は減少したという。自社開発した射出成形機と倉庫自動物流システムによって、原料/半製品の在庫を80%削減し、物流回転率を2〜4倍に高め、月産能力を30万台から90万台に拡大できた。

美的DX4.0

 美的集団は、2020年から「統合的なデジタル化とインテリジェンス」を掲げたDX4.0の段階に入った。DX4.0では、データ中心で全ての事業運営を推進することが求められている。現在、美的集団の注文予測、自動補充、生産スケジュール、物流ルート計画、中国全土の倉庫レイアウトは全て、アルゴリズムとデータに基づくインテリジェントな運用を実現している。業務運営の100%のデジタル化と意思決定行動の70%のデジタル化を達成している。

 強力なデジタル変革を進める中で、美的集団はスマートホーム、スマートビルディング、スマート交通機関、スマート製造、物流、サプライチェーンおよびその他の産業へと事業を拡大していった。「家電メーカー」というイメージは徐々に後退していき、データ駆動型でインテリジェントなオペレーションを備えた、テクノロジーベースの企業として存在感を高めた。

 2020年11月、美的集団は「Midea M.IoT 2.0」をリリースする。「Midea M.IoT 1.0」のアップグレード版で、デジタルプラットフォームの機能レイヤーはより明確かつ豊富になった。デジタルプラットフォームは、製造業のアップグレードと変革を促進する「4つの水平と8つの垂直」で構成されることになった。

4つの水平

機能層、アプリケーション層、ビジネス層、産業層の4層を表す。


8つの垂直

美的集団のグループ企業であるMeiyun Intelligent Data、Ande Intelligence、KUKA China、Hekang New Energy、Midea HVAC and Building、Midea Finance、Midea Procurement Center、Midea Moldなど8つのサブセクターからなるエコシステムを指す。その中で、「美雲智数」は、製造デジタルプラットフォームの他社向けソリューション導入の窓口である。


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