20年前にはなかったニーズにも応えます。助手席向けの車内エンターテインメント充実のためディスプレイを大きくしたいという要望がありますが、エアバッグの搭載位置との兼ね合いでディスプレイを縦方向に大きくするのは限界があります。運転席と助手席の間にあるセンターインフォメーションディスプレイを2ビジョンディスプレイにすれば、助手席の乗員が大画面で動画などを楽しめるとジャパンディスプレイはアピールしています。
また、ジャパンディスプレイは2ビジョンディスプレイがデザイン性向上にも寄与すると期待しています。「高級車ブランドを中心に、ディスプレイを増やすことはインテリアデザインの美学に反するという意見を聞いています。ディスプレイを増やす以外のやり方が欲しいといわれています」(ジャパンディスプレイ 代表執行役会長CEOのスコット・キャロン氏)
20年前にデュアルディスプレイ機能に貢献したシャープも諦めていません。2024年9月の取引先向けイベントでは、1つのディスプレイで2つの映像を表示し、空間を有効活用する「デュアルビューディスプレイ」や、助手席前のディスプレイを必要に応じて運転席からは見えなくする「視野角切り替えディスプレイ」を車載用として参考出品しました。ジャパンディスプレイと同じく、十分な解像度や画質を確保し、クロストーク対策も施しています。
運転席と助手席から異なる映像を見ることができる車載ディスプレイは、「画素数が不十分」という当初の壁を乗り越えて再び市場に挑みます。再挑戦の機会を狙う技術の例は他にもあります。
2000年、キャデラック「ドゥビル」に赤外線暗視システム「ナイトビジョン」が搭載されました。遠赤外線カメラ(サーマルカメラ)によって車両前方にいる人や動物、自動車などを撮影するシステムで、ドライバーはヘッドランプの照射範囲外でも物体に気付くことができます。
その後、ホンダやBMWなども同様の遠赤外線カメラによる暗視システムを採用しました。2006年にはBMWが他社システムの2倍となる300m先までの検知に対応しています。夜間の視野をサポートして事故を防ごうとするのは、今日のADAS(先進運転支援システム)とも共通ですね。
ただ、現在のADASの前方監視用センサーとしては主流ではありません。2006年にBMWがオプション装備として発売したナイトビジョンは、メーカー希望小売価格が27万5000円とプレミアムブランドであることを考慮しても高額でした。センサー自体が高価だったためです。一方、可視光カメラやミリ波レーダーは軽自動車にも搭載できるほど普及しており、レベル2〜3の自動運転ではLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を周辺監視に使う例も出てきました。ADASや自動運転用のセンサーで話題になるのは主にこれら3つのセンサーだといえるでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.