CO2を固定した低炭素素材を発売 既存の成形設備で製品化リサイクルニュース

TBMはカーボンリサイクル技術を活用した低炭素素材「CR LIMEX(シーアール ライメックス)」を発売した。

» 2025年01月07日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 TBMは2024年12月27日、カーボンリサイクル技術を活用した低炭素素材「CR LIMEX(シーアール ライメックス)」を発売したと発表した。

CR LIMEXの概要

 CR LIMEXは、排ガス由来のCO2および工場から排出されるカルシウム含有廃棄物などを低環境負荷プロセスで化学合成したCCU炭酸カルシウムと再生プラスチックを組み合わせた射出成形対応の素材だ。

「CR LIMEX」の構成イメージ 「CR LIMEX」の構成イメージ[クリックで拡大] 出所:TBM
「CR LIMEX 「CR LIMEX」[クリックで拡大] 出所:TBM

 排ガス由来のCO2を化学合成したCCU炭酸カルシウムとして固定化することで、素材全体の約25%(重量比)にCO2を含んでいる。製品に使用された場合は、焼却処理をされない限り、排ガス由来のCO2を長期固定化できる。工場から排出される廃プラスチックを再資源化した再生プラスチックを使用しているため、従来の汎用バージンプラスチックと比較して環境負荷を減らせる。

 今回の素材は、バージンプラスチックと比較して、原材料調達、ペレット製造、焼却時における、温室効果ガス(GHG)排出量を約34%、石油由来プラスチックの使用量を約34%削減できる見込みだ。TBMは無機フィラー分散系複合素材「LIMEX」の開発で培ってきた炭酸カルシウムの制御技術を活用することで、既存のプラスチック製品の成形設備によりCR LIMEXを安定して製品化できる。

 同社は国内でCR LIMEXの開発に関する特許を既に取得している。今後は、鉱物由来の炭酸カルシウムを主原料とする従来のLIMEXの普及を促進しながら、CO2を固定可能なCR LIMEXの普及と新たな用途開発を進めるとともに、カーボンクレジットの創出も目指す。

CR LIMEX開発の背景

 近年、国内外で温室効果ガスの削減や気候変動対策が求められている中、カーボンリサイクル技術の普及がカーボンニュートラル社会の実現に貢献すると期待されている。

 日本政府のグリーントランスフォーメーション(GX)戦略では、カーボンリサイクルを成長投資分野として位置付けている。2050年にカーボンニュートラルの実現を目指し策定された「カーボンリサイクルロードマップ」では、従来の汎用バージンプラスチックの代替材料として、カーボンリサイクル製品の普及開始時期を2040年頃としており、カーボンリサイクル技術の社会実装と普及促進を掲げている。

 米国では「インフレ削減法(Inflation Reduction Act、IRA)」を通じて、CO2回収/貯留(CCUS)技術に対する補助金や税制優遇を実施している。EUは「Fit for 55」や「欧州グリーン・ディール」によりCO2削減/再利用技術を推進している他、炭素税などのカーボンプライシングの導入が技術開発を後押ししている。

 富士経済のレポート「カーボンリサイクル/CO2削減関連技術・材料の世界市場を調査」によれば、グローバルにおけるカーボンリサイクル市場規模は2022年の約18兆円から、2050年までには約277兆円に達すると見込まれており、そのうちCO2利活用製品の市場は2022年の約9兆円から、2050年までには約71兆円に達すると予測されている。

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