京都大学は広島大学との共同研究で、ポリマー半導体を高性能化できる縮合多環π電子系骨格を開発した。チオフェンを縮環したことで、ポリマー主鎖の剛直性や主鎖間の相互作用が向上し、効率的に電荷を輸送できる。
京都大学は2024年11月19日、広島大学との共同研究で、ポリマー半導体を高性能化できる縮合多環π電子系骨格を開発したと発表した。ポリマー主鎖の剛直性や主鎖間の相互作用が向上し、効率的に電荷を輸送できる。
今回開発したジチエノナフトビスチアジアゾール(TNT)は、広島大学が過去に開発したナフトビスチアジアゾール(NTz)の末端にチオフェンを縮環したものだ。
(a)ポリマー半導体の模式図。ビルディングユニット(π電子系骨格)の構造拡張により、ポリマー主鎖の剛直性や相互作用が向上する。(b)構造末端にチオフェンを縮環することによる効果。6員環であるベンゼンを縮環したときに比べると、5員環であるチオフェンを縮環することで、立体障害が軽減されポリマー主鎖の共平面性が向上し、より剛直性や相互作用が向上する。(c)これまで用いていた縮環π電子系骨格「NTz」と本研究で開発したチオフェン縮環π電子系骨格「TNT」の化学構造 出所:京都大学TNTを用いたポリマーPTNT2TとPTNT1-Fの物性やデバイス性能を、NTzのポリマーPNTz4T、PNTz1-Fと比較したところ、剛直性や分子間相互作用が高まっていることが判明した。
また、TNT系ポリマー半導体を活性層とする有機トランジスタ(OFET)では、1.0cm2V−1s−1を超える電荷移動度を示し、NTz系ポリマー使用時よりも大幅に向上。有機薄膜太陽電池(OPV)においても、NTz系ポリマーの1.3倍となる17.4%のエネルギー変換効率を達成した。
PNTz1-FとPTNT1-Fのデバイス性能の比較。(a)OFETの電流−電圧特性。PTNT1-Fでは大幅に電流値を増大し、電荷移動度が向上した。(b)OPVセルの電流−電圧特性。PTNT1-Fでは短絡電流密度、開放電圧、曲線因子の全ての光電変換パラメーターが増大し、エネルギー変換効率が向上した 出所:京都大学今後、TNT系ポリマーの化学構造や成膜条件、OPVのセル構造を最適化することで、エネルギー変換効率20%の達成が期待できる。また、TNTを用いた新たな有機半導体材料の合成や、さまざまな有機デバイスなどへ応用展開を進める予定だ。
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