シーメンスは「第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2024)において、統合デジタルプラットフォーム「Siemens Xcelerator」により「デジタルエンタープライズ」を実現して得られる価値について紹介。産業機械のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるソリューション群を出展した。
シーメンスは「第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2024)」(2024年11月5〜10日、東京ビッグサイト)において、統合デジタルプラットフォーム「Siemens Xcelerator」により「デジタルエンタープライズ」を実現して得られる価値について紹介。産業機械のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるソリューション群を出展した。
シーメンスは、産業機械の将来像として、通信接続により機能の変更が柔軟なコネクテッドマシンとなる世界を想定。それに伴う開発体制においても、全ての開発プロセスがデジタル環境で接続する「デジタルエンタープライズ」を訴求する。
Siemens Digital Industries Software(シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア)産業機械担当バイスプレジデントのRahul Garg(ラフール・ガーグ)氏は「デジタル世界と現実世界を緊密に連携させることでより変化に強い製品やサービスが生み出せるようになる。そのためには『網羅的なデジタルツイン』『デジタルスレッド』『産業用AI』の3つがポイントとなる」と語る。
「網羅的なデジタルツイン」は、開発や使用などの全てのプロセスにおいて、デジタル空間で製造状況や使用状況をリアルタイムで再現し、デジタル空間でのシミュレーションを常に行えるようにする仕組みだ。「製品、製造、(使用時の)パフォーマンスの3つのデジタルツインを用意する必要がある」とガーグ氏は述べる。そのためには、開発や製造のあらゆるプロセスがデジタル化され、得られるデータを活用できるようにすることが求められる。
「デジタルスレッド」は、デジタル化された情報を意図の伝わる形で結び付けていくことだ。企業や業界ごとに変わってくるために、自社のビジネスモデルにあった形で取りまとめていく必要がある。シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアでは、業界ごとにテンプレートを用意し、デジタルスレッド構築をより容易に行えるようにしている。
さらに膨大なデータを効率的に扱うためには、AI(人工知能)の活用も重要なポイントとなる。シーメンスではAIの活用については3つの方向性で考えているという。「1つは日常的で簡単な作業を自動化するためのものだ。製造現場のトラブルなどは伝達の負荷が大きいために実際には10%程度しか報告されていないといわれている。これをLLM(大規模言語モデル)の活用などでより容易にする」とガーグ氏は述べている。
もう1つが、マイクロソフトとの協業で進めている開発の本質的な作業をより迅速に行うための仕組みとしてAIを活用する取り組みだ。シーメンスとマイクロソフトは2023年10月に、シーメンスが展開しているさまざまな産業用ソフトウェアに生成AI機能を組み込んだ、生成AI搭載型アシスタント「Siemens Industrial Copilot」を展開すると発表している。「現在は数社の先行企業とパイロット実証を行っている。自然言語による指示でPLCプログラミングを開発するなど、さまざまな活用方法を検討している」とガーグ氏は説明する。
3つ目が、従来は自動化が難しかった領域をAIで自動化する取り組みだ。例えば、パレットのピック&プレースをロボットで行う際のオペレーションをAIにより半自動化するなど、従来は人の判断が必要だった部分を代替していく。
JIMTOF会場では、これらのデジタルエンタープライズの推進をより容易にする統合デジタルプラットフォーム「Siemens Xcelerator」の価値を紹介。さらに、産業用ロボットの実機の作業を仮想空間でシミュレーションできるバーチャルコミッショニングソリューション「NX MCD」の実演や、汎用的なPCでも駆動させられるソフトウェアベースのCNCコントローラー「SINUMERIK ONE」の紹介を行った。
ガーグ氏は「デジタルエンタープライズを実現するのは長い旅のようなもので100%を実現するのは難しいかもしれないが、徐々に高めていくことが必要だ。まずはデジタルツイン化とデジタルスレッドを構築するところから進めていくのがよいだろう」と述べている。
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