「G-SHOCK」のリサイクルプラとバイオプラの活用法とは?環境配慮材料の活用に挑戦する企業(1/2 ページ)

本連載ではバイオプラスチックやリサイクルプラスチックなどの環境配慮材料の活用に関する国内メーカーの取り組みを取り上げる。第1回は「G-SHOCK」シリーズにおける環境配慮材料の活用事例について紹介する。

» 2024年11月13日 08時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 経済産業省は2024年6月27日に都内で開催した「第9回 産業構造審議会 産業技術環境分科会 資源循環経済小委員会」で、大量のプラスチックを使用する製造業に対し、リサイクルプラスチックの使用量の目標設定や使用実績の報告を義務化する方針を固めたことを発表した。

 また、環境省は2019年5月に「3R(リデュース、リユース、リサイクル)+Renewable(再生可能資源への代替)」を基本原則とした「プラスチック資源循環戦略」を策定。プラスチック資源循環戦略では、「2030年までに最大限(約200万トン)のバイオプラスチックを導入する」という目標が設定されている。その目標を達成するために2021年には、バイオプラスチックを扱うさまざまな企業に向け、持続可能なバイオプラスチックの導入方針と導入を推進する国の施策を示した「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定した。

 これらの発表などを受けて国内のメーカーではリサイクルプラスチックやバイオプラスチックなど環境配慮材料を活用する機運が高まっている。こういった状況を踏まえて、本連載では国内メーカーのリサイクルプラスチック活用に関する最新の取り組みを取り上げる。

 本連載の第1回では、カシオ計算機 羽村技術センター 時計BU 商品企画部 部長 チーフプロデューサーの齊藤慎司氏に、腕時計のブランド「G-SHOCK」シリーズで環境配慮材料を利用した背景やその利用に向けた取り組み、活用事例、今後の展開について聞いた。

リサイクルプラやバイオプラ活用の背景

MONOist G-SHOCKシリーズでリサイクルプラの利用を開始した背景とは?

カシオ計算機 羽村技術センター 時計BU 商品企画部 部長 チーフプロデューサーの齊藤慎司氏 カシオ計算機 羽村技術センター 時計BU 商品企画部 部長 チーフプロデューサーの齊藤慎司氏

齊藤慎司氏(以下、齊藤氏) 近年、環境問題は社会問題であり、この問題に向けた取り組みを行うことは企業の責任となっている。

 当社では、2050年を見据えた長期的な環境経営方針である「カシオ環境ビジョン2050」を2012年に制定し、環境配慮を目的としたさまざまな取り組みをスタートさせた。カシオ環境ビジョン2050は、2021年に全面的な見直しを行い、「カシオグループ環境ビジョン」「カシオグループ環境基本方針」「カシオグループ環境行動指針」「カシオグリーンターゲット2024」から成る環境理念を再構築した。

 カシオグループ環境行動指針では事業活動のステージの1つとして「回収/再資源化」を掲げており、使用済み製品や梱包材の回収/資源化の最大化を目指している。

全面的に見直しを行い再構築した「カシオ環境ビジョン2050」 全面的に見直しを行い再構築した「カシオ環境ビジョン2050」[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機

 また現在、若い世代は企業における環境配慮の取り組みに魅力を感じており、こういった取り組みが入社の志望動機になるケースもある。さらに、一般消費者が製品を買う際には、環境に配慮した製品を購入したいと思う傾向が強まっている。

 これらを踏まえて、G-SHOCKシリーズでも大量生産のために安価なプラスチックを使用しているだけでは、若い世代を含むさまざまな一般消費者の支持を得られないと考え、リサイクルプラスチックやバイオプラスチックなど、環境に配慮した材料の活用に踏み切った。

生産拠点に粉砕機を新規採用

MONOist 環境配慮材料を使うために行った取り組みは何ですか?

齊藤氏 まず、G-SHOCKシリーズでは、ただリサイクルプラスチックやバイオプラスチックを活用するのではなく、「環境配慮」をテーマとした製品でこれらを利用することを決定した。これにより、G-SHOCKシリーズが環境配慮を目的にリサイクルプラスチックやバイオプラスチックを採用していることを一般消費者が分かりやすくなり、ブランドイメージの向上を図れると考えたからだ。

 加えて、生産拠点に粉砕機を新規採用し、本格的な運用を開始した。この粉砕機は、当社の腕時計で利用する部材の射出成形で生じる端材などの廃材をペレットサイズまで粉砕できる。これにより、G-SHOCKシリーズで使用するリサイクルプラスチックを確保している他、廃材の削減などでも効果を発揮している。

 リサイクルプラスチックやバイオプラスチックを用いた製品の開発に当たっては、G-SHOCKシリーズの耐久性や強度などの基準を満たすために、さまざまなテストや確認作業を行った。一例を挙げると強度については、リサイクルプラスチックあるいはバイオプラスチックの量をコントロールしながら、どれくらいの量を混ぜたときに求める強度がなくなるかをテストした。

 ただ、リサイクルプラスチックやバイオプラスチックの採用による性能への影響は全体の設計を調整することで対応可能なことも分かっている。例えば、G-SHOCKのバンドにリサイクルプラスチックを使用することで強度が落ちる場合はその厚みを増やすことで解決できる。

 なお、当社として環境配慮をテーマに初めて開発した製品はアウトドアウォッチブランド「PRO TREK(プロトレック)」の「PRW-61」だ。PRW-61は、ケースやウレタンバンド、裏蓋(ウラフタ)にトウゴマの種やトウモロコシから抽出した成分を含むバイオプラスチックを採用している。

 PRW-61での環境配慮材料の活用が購入者や一般消費者から好評で、G-SHOCKシリーズでも環境配慮材料の採用を行いやすくなった。

「PRO TREK」の「PRW-61」 「PRO TREK」の「PRW-61」[クリックで拡大] 出所:カシオ計算機
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