ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は労働時間当たりGDPについて、OECDに含まれない新興国と日本を比較していきます。
今回は、世界各国の労働生産性の統計データをご紹介します。第26回、第27回では、GDPについて「時系列的な実質値」と「空間的な実質値」があることをご紹介しました。実は、労働生産性についても同様の見方ができます。今回ご紹介するのは、労働生産性の「時系列的かつ空間的な実質値」の国際比較です。
参照するのはILO(国際労働機構)のデータベースです。ILOでは労働生産性の指標として、世界189の国や地域についての労働時間当たりGDPが公開されています。このデータは、実質値かつ購買力平価換算値となっています。前回までに出てきた次のようなものです。
労働生産性については以前もご紹介しましたが、主に先進国で構成されるOECDの実績値を参照していました。今回は、新興国などOECDに含まれない国々の労働生産性についても見ていきましょう。
まずは主要国(G7+BRICs+韓国)の推移を見ていき、続いて、西欧/北欧や東欧/南欧、アジア/大洋州のグループごとの数値を見ていきます。最後に、最新のデータである2023年の世界ランキングをご紹介します。
早速、主要国の労働生産性を時系列で眺めてみましょう。
主要国の労働生産性を見ると米国、ドイツ、フランスが非常に高い水準で、イタリア、英国、カナダが続いています。
2023年の数値を見ると、日本以外のG7各国は57〜70ドル程度ですが、日本は41.7ドルとかなり低い水準です。韓国の上昇傾向が強く、近年ではやや日本を上回っているのも確認できますね。
BRICs諸国とはまだ大きな差がありますが、中国の上昇ぶりも大きく、日本とも少しずつ差が縮まっている状況のようです。日本はG7の中では労働生産性がかなり低いことになります。
ドイツやフランスは労働時間当たりの生産性が高い国として知られていますし、図1でもそのことが確認できました。この2か国が属する西欧/北欧地域の労働生産性について、国際比較してみましょう。
西欧/北欧地域の労働時間当たりGDPを見るとルクセンブルクの圧倒感や、近年のアイルランドの急成長ぶりが目を引きますね。ノルウェーもかなり高い水準で推移しています。その他の国々では60〜80ドルくらいの範囲で、足並みをそろえて少しずつ上昇しているようです。
この地域の国々は総じて労働生産性が高く、ドイツであっても相対的に低い水準というのが印象的です。日本の水準はこれらの国々と比較すると、大きな差があるようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.