新製品のMIR8060C1は、従来品と同じく画素数は80×60だが、熱画像を不明瞭にする光入射成分を抑制するレンズを新たに開発することで100×73度の広画角化を実現した。フレームレートは4/8fpsから選択、検知可能温度はー5〜60℃、温度分解能は180mK。モジュールサイズは19.5×13.5×9.7mmで、厚みが0.2mm増えただけとなっており、既存のMelDIRとの置き換えは容易だ。
MIR8060C1の最大の特徴は広画角化による検知面積の拡大である。例えば、12畳の江戸間(3.52×5.28×2.4m)において、見守り用途で一般的な設置場所である部屋の天井の隅にMelDIRを設置した場合、画角78×53度の従来品は床面をカバーしきれないのに対し、MIR8060C1は床面全体をカバーして部屋内にいる人全員を検知できる。
また、一般的な住宅の部屋の天井の位置に当たる高さ2.4mに設置した場合、従来品のカバー範囲が約6畳にとどまるのに対し、MIR8060C1は12畳をカバーできる。「これまではトイレなどであれば1個のセンサーでカバーできたが、通常の居室についてはカバーしきれないことも多かった。MIR8060C1であればそのような課題を解決できる」(三菱電機 高周波光デバイス製作所 赤外線センサデバイスプロジェクトグループ プロジェクトグループマネージャーの太田彰氏)。
さらに、スマートオフィスのような広い空間で人数カウントや行動把握などのモニタリングを行う場合、MelDIRは天井に複数設置する必要がある。従来品で200坪(22×30×2.6m)のオフィスをモニタリングするには90個のMelDIRが必要だったが、MIR8060C1であれば半分以下の40個で済む。
MelDIRは、顧客の製品開発期間を短縮できるように、評価用デモキット、レファレンスデザインなど各種ユーザーサポートツールを用意している。特に、主な用途として想定する高齢者施設での見守りやスマートビルでの人数カウントでは、AI(人工知能)モデルの開発も必要になるが、そのためのAIモデル作成ツールも無償で提供している。オープンソースのAIモデルを基に、評価用デモキットに用いているSTマイクロエレクトロニクスのマイコンのエッジAIツールと連携して、簡単に組み込めるようにしている。太田氏は「エッジAIを活用すれば、赤外線センサーの画像データが外に出ないようにして見守りにおけるプライバシー配慮に対応できる」と述べている。
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