外部磁場なしで作動する新型超伝導磁束量子ビットを開発量子コンピュータ

NTTは、コイルなどの補助回路を必要とせずに、ゼロ磁場で最適動作する超伝導磁束量子ビットを開発した。外部磁場を必要とせずに、マイクロ秒オーダーのコヒーレンス時間を持つ磁束量子ビットの作製に成功した。

» 2024年10月25日 11時00分 公開
[MONOist]

 NTTは2024年10月15日、情報通信研究機構(NICT)、東北大学、名古屋大学と共同で、コイルなどの補助回路を必要とせずに、ゼロ磁場で最適動作する超伝導磁束量子ビットを開発したと発表した。量子コンピュータの小型化に寄与する。

 今回の研究では、シリコン基板上に結晶成長させた窒化ニオブを用いた窒化物超伝導量子ビット技術とπ接合技術を用いて、π接合を有する磁束量子ビットを作製。具体的には、PdNiを用いてNbN電極上にπ接合を作り、NICTが開発したNbN/AlN/NbNジョセフソン接合とNTTによる3次元共振器用磁束量子ビットの最適デザインを組み合わせ、補助回路を使わずに最適動作する超伝導磁束量子ビットの作製に成功した。

キャプション 従来型と新型の超伝導磁束量子ビット回路の概念図[クリックで拡大] 出所:日本電信電話

 NTTの長寿命量子ビット測定系を用いて測定したところ、最適動作点がゼロ磁場でで、1.45マイクロ秒のコヒーレンス時間を観察できた。π接合を持つ従来の位相量子ビットに比べて360倍のコヒーレンス時間の改善となる。一方、π接合のない従来の磁束量子ビットでは、16マイクロ秒のエネルギー緩和時間があり、現状のNbN/PdNi/NbN積層構造によるπ接合はコヒーレンス時間を改善するという課題があることも分かった。

キャプション (a)新型超伝導磁束量子ビットの基底状態から励起状態への遷移周波数の磁場依存性を表すマイクロ波分光スペクトラム。矢印は磁束量子ビットの最適動作点を表す。(b)エネルギー緩和時間T1=1.45μsを示すコヒーレンス時間の測定結果 出所:日本電信電話

 同成果は、外部磁場を必要とせずに、マイクロ秒オーダーのコヒーレンス時間を持つ磁束量子ビットを作製したもので、量子回路の集積化、微細化に重要な技術となる。今後、コヒーレンス時間の延長、大規模集積化に向けた素子特性の均一性の改善を目指し、回路構造や作製プロセスの最適化を進める。

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