グリッドと電気通信大学の共同提案「仮想発電所受給調整におけるリスクヘッジ型量子古典確率最適化手法の開発」が、新エネルギー・産業技術総合研究所(NEDO)のプロジェクトに採択された。
グリッドは2024年9月10日、オンラインで記者会見を開き、電気通信大学との共同提案「仮想発電所受給調整におけるリスクヘッジ型量子古典確率最適化手法の開発(以下、本プロジェクト)」が、新エネルギー・産業技術総合研究所(NEDO)のプロジェクトに採択されたと発表した。
本プロジェクトの初期仮説検証フェーズの実施期間(委託期間)は2024年7月〜2025年10月で、このフェーズをクリアした場合に、1年半の期間で本格研究フェーズを行う。
世界的に脱炭素化に向けた活動が活発となる中で、再生可能エネルギーの活用が求められるようになっている。しかし、太陽光や風力は天候に左右されやすく、電力供給の不安定さが問題となる。
この解決策として、「仮想発電所(バーチャルパワープラント:VPP)」が注目されている。VPPとは、住宅、オフィス、工場の小型発電設備や蓄電池を1つの発電所のように統合し、電力市場と連携して管理/調整を行うことで電気を無駄なく使うシステムだ。アグリゲーターはこれらの設備を一括管理する役割を担い、各施設からのデマンドレスポンス(DR)を受けて、発電と消費のバランスをリアルタイムで最適化して調整する。このプロセスは「需給調整」と呼ばれ、効率的かつ安定的な電力供給を実現するために重要な役割を果たす。
VPPにおいて、エネルギー管理の効率化と持続可能なエネルギー供給を実現するためには、需給調整の最適化が必要だが、VPPの需給調整には、発電予測、需要予測、電力市場の価格予測など、多くの不確実な要素が含まれているため、シナリオ数が膨大に増加する。そのため、古典コンピュータでは全シナリオの生成や、あるいは全シナリオに応じた最適化計算が困難という課題がある。
グリッド 代表取締役社長の曽我部完氏は「現在、VPPの需給調整におけるシナリオの作成で利用されている確率計画法では、分布の範囲の中で何度も起こりうるシナリオをサンプリングして計画のリスクとリターンを評価しているが、計算量が膨大になるため実用化が難しく、実際の需給運用では使いものにならなかった」と語った。
また、「不確実性が高い電力システムの問題を量子コンピュータで計算により解決する手法」についても、ほとんど研究されておらず、適切な手法が考えられていないのが現状だ。
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