カチッ、カチッとペン先を何度も出し入れできる「ノック式ボールペン」の仕組み100円均一でモノの仕組みを考える(5)(1/2 ページ)

本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第5回のお題は「ノック式ボールペン」です。

» 2024年10月15日 09時00分 公開

こんな人にオススメの記事です!

100円均一でモノの仕組みを考える
  • モノの仕組みや構造、分解に興味のある方
  • 設計スキルの向上を図りたい方
  • 自社製品の差別化/競争力アップを図りたい方

 本連載は、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を知ることを目的としています。前回は、ボルトやナットを締めたり、緩めたりするための工具「ラチェットレンチ」の仕組みを取り上げました。

テーマ5:ノック式ボールペン

 連載5回となる今回は「ノック式ボールペン」を題材に取り上げます。なお、解説するのはインクが出る仕組みではなく、“ボールペンのペン先を出し入れする仕組み”になります。

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ノック式ボールペンの部品構成

 まずは、全体の構成を見ていきます。ノック式ボールペンは、内部に「ノック機構」が組み込まれており、ペン先を出したり、引っ込めたりできます。主に以下のような部品で構成されています。

ノック式ボールペンの部品構成(1) 図1 ノック式ボールペンの部品構成(1)[クリックで拡大]
ノック式ボールペンの部品構成(2) 図2 ノック式ボールペンの部品構成(2)[クリックで拡大]

ノックボタン

 ペンの上部にあり、指で押すことでペン先を出し入れする役割を担うボタン。このボタン動作がノック機構を動かすトリガーとなります。

回転子

 ノックボタンを押すと動作する小さな回転機構のことです。この回転子が回転することで、ペン先の出し入れの動作を実現します。ノックボタンを指で押すたびに回転子が回転して、ペン先を出したり、引っ込めたりします。

インクチューブ

 インクが入っている細長い筒のことです。ペン先にインクを供給する役割を担います。インクチューブの下端にはボールポイント(ボール)が接続されており、書く際にインクがスムーズに紙に転写されるようになっています。

ペン先(ボールポイント)

 ペン先に取り付けられた小さなボールで、インクを紙に塗布する部分となります。このボールが回転することで、チューブ内のインクを紙に移します。

スプリング

 ペン内部にあり、ペン先の出し入れをスムーズに行うための弾力を提供します。ノックボタンを押した後、スプリングの力でペン先を戻します。

クリップ

 ペンの外側にある、ペンをポケットやノートに挟むための部品です。クリップは外観の一部ですが、構造的に軸部分と接続されていることが多いです。

ボディー(ペン軸)

 ペンの外側を覆っている部分で、全ての内部部品を収納しています。プラスチックや金属で作られることが多く、ペンのデザインや使いやすさに影響します。内部には回転子の回転を補助する「カム」が設けられています。

グリップ

 ゴムライクの素材でできた滑り止めです。

肝となる「回転カム機構」

 ノック式ボールペンの肝となる機構が「回転カム機構」です。ノックボタンを押すと、回転子という小さな部品が回転して、ペン先、インクチューブが上下に動きます。この回転子は、ノックボタンを押すたびに少しずつ回転し、ペン先が出たり、引っ込んだりする動きを繰り返します。

ノック式ボールペンの部品を簡略化した図 図3 ノック式ボールペンの部品を簡略化した図[クリックで拡大]
  • 1回目のノック:
    ノックボタンを押すと、回転子が回転してペン先を先端に押し出す(ペン先が出る)
  • 2回目のノック:
    もう一度ノックボタンを押すと、回転子が再び回転してペン先を元の位置に引き戻す(ペン先が引っ込む)
  • 3回目のノック:
    さらに、もう一度ノックボタンを押すと、回転子が回転してペン先を先端に押し出す(ペン先が出る)

※以降この繰り返し

 ちなみに、この回転子の回転を補助しているのが、ボディー内側に付いているカムです。

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