ボルトやナットを素早く締めたり、緩めたりできる「ラチェットレンチ」の仕組み100円均一でモノの仕組みを考える(4)(1/2 ページ)

本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第4回のお題は「ラチェットレンチ」です。

» 2024年08月28日 09時00分 公開

こんな人にオススメの記事です!

100円均一でモノの仕組みを考える
  • モノの仕組みや構造、分解に興味のある方
  • 設計スキルの向上を図りたい方
  • 自社製品の差別化/競争力アップを図りたい方

 本連載は、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を知ることを目的としています。前回は、長さを測定するための道具である「コンベックス」(金属製巻き尺)の仕組みを取り上げました。

テーマ4:ラチェットレンチ

 連載第4回となる今回は「ラチェットレンチ」を題材に取り上げます(図1)。ラチェットレンチは、ボルトやナットを締めたり、緩めたりするための工具で、狭い場所や作業しにくい場所などでよく用いられます。

今回のお題「ラチェットレンチ」のイメージ 図1 今回のお題「ラチェットレンチ」のイメージ[クリックで拡大] 出所:iStock/Rawf8

 このレンチには「ラチェット機構」という歯車のような仕組みが組み込まれており、一方向に回転するときにだけ力が加わり、逆方向に動かすと空回りするようになっています。この仕組みにより、レンチを外すことなく、ボルトやナットを締める/緩める動作を何度も繰り返し(連続的に)行うことができます。

 なお、100円均一ショップでは見つけられませんでしたが、ソケット式のものであれば、レンチの先端に取り付ける部品を交換することで、さまざまなサイズのボルトやナットに対応できます。

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ラチェットレンチの部品構成

 ラチェットレンチは、主に以下のような部品で構成されています(図2)。

ラチェットレンチを構成する主な要素 図2 ラチェットレンチを構成する主な要素[クリックで拡大]

ハンドル(柄)

 使用者が握る部分のことで、力を加えるためのレバーとなります。長さや形状はさまざまで、手にフィットするようにデザインされています。

ヘッド(頭部)

 レンチの先端部分のことで、内蔵されているラチェット機構(後述)により、ボルトやナットを締めたり、緩めたりできます。今回の製品は、ヘッドの穴にボルトやナットを直接はめ込む形式ですが、ソケット式のものであれば、前述の通り、先端の部品を交換することで、さまざまなサイズのボルトやナットに対応可能です。

ラチェット機構

 ラチェットレンチの中心的な部分であり、一方向にのみ回転や移動を許可し、逆方向の動きは阻止する機構です。切り替えレバーによって、回転方向を切り替えることができます。

ラチェットレンチの切り替えレバーについて 図3 ラチェットレンチの切り替えレバーについて[クリックで拡大]

いざ分解……と思ったら

 ここで、ラチェット機構を詳しく見ていくために、いつものように分解しようと思ったのですが問題発生です。今回のラチェットレンチですが、ボルトではなくカシメによって部品が組み付けられていました。

 カシメとは、金属やその他の素材に圧力をかけて変形させることで、接合部分をしっかりと固定する加工方法のことです。接合部が一体化するため、ネジ止めよりも非常に強固な接合が得られます。

カシメについて 図4 カシメについて[クリックで拡大]

 “強固に接合されている”ということは、簡単に分解できないことを意味します。製品としては信頼性が上がってよいのですが、内部を観察して、仕組みや構造を学ぼうとする本連載としては非常に困りものです……。

 というわけで、今回は分解するのを諦め、早々に機構をCAD化してみました。あらためて、ラチェット機構部分の部品構成を見てみましょう。

ラチェット機構の部品構成

 ラチェット機構は、主に以下のパーツで構成されています(図5)。

ラチェット機構の部品構成 図5 ラチェット機構の部品構成[クリックで拡大]

ギア

 歯車で、一方向に回転するときにのみ動力を伝える役割を果たします。

切り替えレバー

 ラチェットの回転方向を切り替えるためのレバーです。これを動かすことで、締める方向と緩める方向を切り替えることができます。

 切り替えレバーの切り替えを補助するため球です。

スプリング

 球を押し付ける力を加えるためのバネです。

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