本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第4回のお題は「ラチェットレンチ」です。
本連載は、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を知ることを目的としています。前回は、長さを測定するための道具である「コンベックス」(金属製巻き尺)の仕組みを取り上げました。
連載第4回となる今回は「ラチェットレンチ」を題材に取り上げます(図1)。ラチェットレンチは、ボルトやナットを締めたり、緩めたりするための工具で、狭い場所や作業しにくい場所などでよく用いられます。
このレンチには「ラチェット機構」という歯車のような仕組みが組み込まれており、一方向に回転するときにだけ力が加わり、逆方向に動かすと空回りするようになっています。この仕組みにより、レンチを外すことなく、ボルトやナットを締める/緩める動作を何度も繰り返し(連続的に)行うことができます。
なお、100円均一ショップでは見つけられませんでしたが、ソケット式のものであれば、レンチの先端に取り付ける部品を交換することで、さまざまなサイズのボルトやナットに対応できます。
ラチェットレンチは、主に以下のような部品で構成されています(図2)。
使用者が握る部分のことで、力を加えるためのレバーとなります。長さや形状はさまざまで、手にフィットするようにデザインされています。
レンチの先端部分のことで、内蔵されているラチェット機構(後述)により、ボルトやナットを締めたり、緩めたりできます。今回の製品は、ヘッドの穴にボルトやナットを直接はめ込む形式ですが、ソケット式のものであれば、前述の通り、先端の部品を交換することで、さまざまなサイズのボルトやナットに対応可能です。
ラチェットレンチの中心的な部分であり、一方向にのみ回転や移動を許可し、逆方向の動きは阻止する機構です。切り替えレバーによって、回転方向を切り替えることができます。
ここで、ラチェット機構を詳しく見ていくために、いつものように分解しようと思ったのですが問題発生です。今回のラチェットレンチですが、ボルトではなくカシメによって部品が組み付けられていました。
カシメとは、金属やその他の素材に圧力をかけて変形させることで、接合部分をしっかりと固定する加工方法のことです。接合部が一体化するため、ネジ止めよりも非常に強固な接合が得られます。
“強固に接合されている”ということは、簡単に分解できないことを意味します。製品としては信頼性が上がってよいのですが、内部を観察して、仕組みや構造を学ぼうとする本連載としては非常に困りものです……。
というわけで、今回は分解するのを諦め、早々に機構をCAD化してみました。あらためて、ラチェット機構部分の部品構成を見てみましょう。
ラチェット機構は、主に以下のパーツで構成されています(図5)。
歯車で、一方向に回転するときにのみ動力を伝える役割を果たします。
ラチェットの回転方向を切り替えるためのレバーです。これを動かすことで、締める方向と緩める方向を切り替えることができます。
切り替えレバーの切り替えを補助するため球です。
球を押し付ける力を加えるためのバネです。
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