ただし、日本国内における組み込み機器の開発では、コスト削減効果を狙ってLinuxをはじめとするオープンソースOSの採用を優先する意向が強い。世界全体だと44%がオープンソースOSを支持しているのに対し、日本は49%となっており若干支持率が高い。OS単体の生涯コスト削減効果は推定で約3億5600万円に上ることが、オープンソースOSが支持される背景にある。
ただし、オープンソースOSはセキュリティや安全性への対応が不十分であり、サポートやメンテナンスなど保守に従事するスタッフを雇用し続けるコストを含めた総所有コスト(TOC:Total Cost of Ownership)は高くなる傾向にある。BlackBerry Japan プリンシパル・フィールドアプリケーション・エンジニアの木内志朗氏は「例えば、2021〜2022年に発見された脆弱性の件数は、Linuxの2283件に対しQNXは15件と極めて少ない。また、開発フェーズのコストではLinuxに一定の優位性があるものの、量産フェーズではBlackBerryのサポートが得られるQNXと比べてLinuxは保守のため多くのスタッフを雇用し続けなければならない。総所有コストで見ればオープンソースOSが有利とはいえない」と説明する。
また、今回の調査で、日本におけるオープンソースOSを用いた組み込みソフトウェア開発では、約4分の1に当たる24%が、OSの開発/認証/テストによって納期を逃し、市場投入期間で平均1.4カ月の遅延が発生していることが分かった。また、28%がOSに必要な安全認証を欠いていると認識しており、認証取得作業のコストは平均8300万円に上るという。これら納期と予算の圧力によって、日本の組み込みソフトウェア開発者の58%は、重要な安全面で妥協していると回答している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.