BlackBerry Japanは、組み込みシステム向けソフトウェアプラットフォーム「BlackBerry QNX」のプライベートイベント「BlackBerry QNX/TECHForum JAPAN 2023」を東京都内で開催。QNXの事業進捗や「BlackBerry IVY」の採用状況などについて説明した。
BlackBerry Japanは2023年11月7日、組み込みシステム向けソフトウェアプラットフォーム「BlackBerry QNX(以下、QNX)」のプライベートイベント「BlackBerry QNX/TECHForum JAPAN 2023」の開催に合わせて東京都内で記者会見を開き、QNXの事業進捗や大手クラウドベンダーAWSと共同開発したインテリジェント車載データプラットフォーム「BlackBerry IVY(以下、IVY)」の採用状況などについて説明した。
BlackBerryのQNXは、リアルタイムOS(RTOS)である「QNX Neutrino」を中核とする組み込みシステム向けソフトウェアプラットフォームであり、同社のIoT(モノのインターネット)事業部の大きな柱の1つとなっている。QNXの売り上げで大きな割合を占めるのは車載情報機器(IVI)を中心とした自動車向けだが、近年は産業機器、医療機器、ロボットなど非自動車向けでの採用も拡大しつつある。BlackBerryのIoT事業部のトップであるPresident IoTを務めるマティアス・エリクソン(Mattias Eriksson)氏は「2023年度(2024年2月期)の上期のデザインウィン数(ユーザー企業が新たに設計した組み込みシステムへの採用数)は前年同期比140%となり過去最高を記録した。特筆すべきは、最重要顧客として重視する自動車向けだけでなく、非自動車向けとなる一般組み込み市場(GEM:General Embedded Market)でも大きく伸長したことだろう」と語る。
また2023年度は、2023年5月にIVYを正式リリースした他、マルチコアプロセッシングに対応したソフトウェア開発プラットフォーム「QNX SDP8.0」を前倒しで投入するなど、これまでの10年間でも最大規模の製品発表を行った1年間になったとする。売上高の35%を研究開発投資に充てており、人員増強もについて日本を含めたアジア太平洋地域に50%を割り当てている。
エリクソン氏は「次世代エッジコンピューティングデバイスの開発は、システムの複雑さやコスト削減、開発期間の短縮、セキュリティ、安全性なども含めて極めて難易度が高い。独自に内製化に取り組む企業もあったが、現在はQNXのようなソフトウェアプラットフォームを中心とした広がりを持つエコシステムを活用する利点に目を向け始めている」と説明する。
ここで同氏が言う次世代エッジコンピューティングデバイスで最先端を行くのが自動車である。高級車ではソフトウェア規模がコード行数で5億行に達しており、これまでのECU(電子制御ユニット)ベースの分散型システムから、IVIやADAS(先進運転支援システム)などの各機能を統括管理する論理ドメインシステムに移行しつつあり、将来的には車両の中核のHPC(高性能コンピューティング)とサブシステムの組み合わせに置き換わっていく。「今後の自動車開発はソフトウェアが中心となり、ソフトウェア定義自動車(SDV)になっていくだろう。QNXは、ハードウェアと上層のアプリケーションやクラウドの間をつなぐミドルウェアとしてSDVをつなぐ役割を担っていく」(エリクソン氏)という。
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