サイコックスは、サイコックス大口工場(鹿児島県伊佐市)で、貼り合わせSiC基板「SiCkrest)」の8インチ量産ラインを構築することを決定した。
住友金属鉱山とその100%子会社であるサイコックスは2024年9月27日、サイコックス大口工場(鹿児島県伊佐市)で、貼り合わせSiC(シリコンカーバイド)基板「SiCkrest(サイクレスト)」の8インチ(200mm)量産ラインを構築することを決定したと発表した。
SiCkrestの6インチ(150mm)基板は既に販売を開始しており、貼り合わせ技術のライセンス供与も実施している。2022年7月に開発ラインへの投資を決定したSiCkrestの8インチ基板は、2024年9月に顧客認定の取得に向けたサンプル出荷を開始した。今回の8インチ基板の量産ライン構築により、2025年度下期には貼り合わせSiC基板の月産能力が1万枚(6インチ換算)を超える。さらに、ライセンス供与先への多結晶SiC支持基板の供給も開始する予定だ。
SiCkrestは、独自の接合技術を応用してウエハーを2層化することで、性能と低コストを両立させた製品だ。低抵抗の多結晶SiC支持基板の上に高品質な単結晶層を薄く貼り合わせることによって、単結晶の特性を維持しつつ、基板全体における低抵抗化と通電劣化の抑制効果を実現している。
SiCは主に電力を制御するパワー半導体に使用される材料だ。従来のシリコンと比較して高電圧に対応可能で、エネルギー損失も大幅に低減できることから、ハイブリッド車や電気自動車(EV)などの駆動制御装置で要求される大容量領域(大電流/高耐電圧)において、装置全体の小型化や航続距離向上を後押しできる。そのため、優れた材料として注目されており、市場の拡大が期待されている。
また、SiC単結晶は製造に多くのエネルギーを必要とするが、単結晶と多結晶の貼り合せ基板であるSiCkrestは、エネルギー消費を抑えつつ、供給量を増やすことが可能だ。
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