――LAスクールの運営によって得られた成果や、今後の展望について教えてください。
原田氏 LAスクールでは5日間の講習の後、各受講者の自社工場での取り組みをフォローするためのアフタースクールを、希望に応じて開講しています。現在では、その取り組みをさらに発展させ、希望制で受講者の工場を訪問し、ワークショップを開催する出張セミナーを実施しています。
お客さまが構想している生産ラインに対する具体的なアドバイスも行うほか、当社の類似する生産ラインを見ていただき、お客さまに自ら気付きを得て構想を深めてもらうことに主眼を置いています。より踏み込んだアクションを起こすことで、お客さまの理想に近い生産ラインが実現し、多くの感謝の声をいただいている状況です。
私たちもお客さまの生産ライン構築をお手伝いすることで、受講者の求めることをより具体的に想像でき、カリキュラムをブラッシュアップするためのヒントとなっています。
安東氏 一方、LAスクール受講生の中には、頭では理解していても自社で実践することに自信を持てない方もいるかと思います。そうした受講生や企業に向けたモチベーションを高める場として、LAスクールのOB会などコミュニティーの開設を構想しています。
卒業生同士が集まり、取り組みの成功事例の共有や互いの工場見学を行えば、私たちが伝える以上のヒントを得られる場になると考えています。また、LAスクールのOBから講師を推薦してもらうなど、LAスクールの運営面にも参加してもらうことで、取り組みの輪をさらに広げて、これまで以上に製造業を盛り上げていきたいと思っています。
横瀬氏 安東が申し上げた通り、LAスクールは基本的には主催である当社単独での取り組みでした。しかし、これからは、LAスクールの理念にご賛同いただける方々とより積極的に手を組み、今まで以上に製造業全体を元気づける活動へと発展させたいと考えています。
カリキュラムも、現在はデンソーが培ったノウハウの伝達が中心ですが、まだ当社も導入していない先進のデジタル技術なども含めて、拡充する余地は十分にあります。そこで、東京大学と連携して学内にラーニングファクトリーを設置して、次世代のモノづくりに向けた研究をスタートしました。
共同研究では、現場のハイスキルな技術者が問題解決に当たる際の思考や行動を知識体系としてデータ化し、形式知として他の技術者にも再現できる仕組みをデジタル上で構築しています。さらに、この研究を教材とした大学院生への授業も行っています。
当社だけでできることは限られています。しかし、さまざまなステークホルダーの皆さまと協力することで「できること」の幅は大きく広がります。さまざまな企業の皆さまと協働して仲間を増やし、教育機関の協力も得ることで、真因について考え抜く生産技術者の育成支援していく。こうしたLAスクールの取り組みを通して、現場の技術とデジタルの融合によって、日本のモノづくりの現場に貢献していきたいですね。生産技術の革新を起こす次世代を育てていきます。
株式会社Skillnote 社長室 マネジャー
高木孝介
新卒で大手自動車メーカーに入社し、車載用燃料電池の開発を7年間担当。
部品やコンポーネントの構想設計〜詳細設計までを一気通貫で経験しつつ、海外メーカーとの共同開発案件も担当し、20件以上の技術特許を出願。
その後、大手コンサルティングファームの製造業特化型部門において、モビリティサービスの事業企画支援に従事。日本の製造業における人材の活性化が重要と思い至り、Skillnoteに参画。
『つくる人がいきるスキルマネジメント―現場と経営をつなぎ、製造業の未来をひらくアプローチ』
いま、注目の集まる「スキルマネジメント」のノウハウを体系化した書籍を発売。労働人口の減少が続く中で企業の競争力の源泉が「人」であることが改めて注目される時代に、人が保有する「スキル」をベースとする「スキルマネジメント」の重要性を説き、事例を交えてその導入ステップを解説する一書。本書は、製造業の技術・製造部門および人事部門には、今日から踏み出す第一歩の実践的な後押しとなる。さらに、事業目標の達成に向けて人材マネジメントの課題がある、従業員の育成法やキャリア開発支援に模索を続けている、などの場面で業種業界を問わず役立つ一書となっている。(Skillnoteより)
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