社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第3回のテーマは「ODMメーカーの種類と特徴、そして選び方のポイント」だ。
自社オリジナル製品の製品化にチャレンジする際、社内に設計者がいなければ、新たに人材を採用するか、ODM(設計製造委託)するしかない。設計製造を受諾するODMメーカーは製品を“設計”すると同時に、製品を組み立てる“製造”も行う。このODMメーカーには各メーカーさまざまな特徴があるため、ODMを依頼する企業はこれから作ろうとしている製品に適したODMメーカーを選定しなければならない。今回から3回にわたり、ODMメーカーの種類と特徴、そして選び方を解説する。
ODMメーカーの種類は、大きく分けて2つある。
一つは、製品の設計もしくは製造(製品の組み立て)を行っていた企業が成長してODMメーカーとなったケースだ。製品を設計する設計メーカーは、製品ラインアップが増えると社内の設計者だけでは設計がまかなえなくなり、協力会社に設計を委託する。また、自社で製品の製造も行う設計メーカーが設計に特化し、製造を分社化する場合もある。これらのような設計や製造を専門とする企業が成長し、ODMメーカーになるのだ。筆者は、これを「発展型ODMメーカー」と呼んでいる。
もう一つは、部品の生産が中国に移管され、仕事の少なくなった部品メーカーが事業を拡大して設計と製造を受諾し、ODMメーカーとなったケースだ。この場合、1つの部品メーカーが窓口となり、複数の部品メーカーと連携してODMメーカーとなる。筆者は、これを「連携型ODMメーカー」と呼んでいる(連載第2回「製造業の仕組みとODM(設計製造委託)【後編】」を参照)。
製品を製品化するには、
の3つの役割が必要だ(連載第1回「製造業の仕組みとODM(設計製造委託)【前編】」を参照)。これを踏まえて考えてみると、「設計」もしくは「製品の製造」を得意とするのが発展型ODMメーカーであり、「部品の製造」を得意とするのが連携型ODMメーカーであると理解できる。なお、この観点から見たこれら2つのODMメーカーの特徴については、次々回(連載第5回)で説明する。
以降では、ODMメーカーを選定する際のポイントについて解説する。
ODMメーカーが、過去にどのようなカテゴリーの製品を扱ったかを調べる。その際、以下のように分類して考えるとよい。ちなみに本連載では、本棚のような木材製品、革/布製品、化粧品のような化学製品は省く。
ODMメーカーの選定では、これから作る製品に類似するカテゴリーの製品を設計した経験のあるメーカーを選ぶべきだ。例えば、無印良品で販売している雑貨を扱うODMメーカーに、新方式のシュレッダーの設計と製造を委託しても無理である。
設計の種類は、大きく分けて次の3つがある。筆者は機構設計者であるため、本稿では機構設計を中心に説明する。
機構設計には、駆動系と非駆動系がある。ギアなどのような駆動する部品があるかないかである。次に、材料に関わる設計がある。樹脂と板金、金属(エンジンの部品など)部品の設計である。機構設計者であれば何でも設計できるわけではないので、ODMメーカーの選定時には、駆動系/非駆動系、何の材料の設計ができる設計者が所属しているかを調べる必要がある。
また、技術分野に関しても、ファンや放熱板のある製品に必要な熱設計、レンズがある製品に必要な光学設計、スピーカーがある製品に必要な音響設計などの専門分野がある。前述の製品カテゴリーと同じく、これから作ろうとする製品にこれらのような専門の技術分野が含まれるのであれば、それ専門の設計者が所属するODMメーカーを選ばなければならない。製品化プロセスでの各種試験や測定においても、これらの専門分野で特殊な試験機が必要である。
ODMメーカーのWebサイトを見ると、大抵は過去に設計、製造した製品の写真が掲載されている。よって、製品カテゴリーや何の設計ができるかに関しては、これから作ろうとする製品がWebサイトに掲載されている製品と類似しているかを確認すれば、おおよそ推測できる。
製品の外観デザインは、機構設計を開始する最初から関わってくる。ODMメーカーに外観デザイナーがいるに越したことはないが、これは社外のデザイン会社に依頼してもよい。
以上の内容は、電気設計やソフトウェア設計でも同じであるが、詳細の説明は割愛する。最近は、Wi-Fi/Bluetoothなどの無線通信に関わる製品やAI(人工知能)に関わる製品を作ろうとするベンチャー企業が多いが、これらに関わる電気設計とソフトウェア設計の人材は現状不足している。
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