東北大学と慶應義塾大学は、クロム窒化物がアモルファス相を介さない相変化により、大きな電気抵抗変化を示すことを発見した。高速ジュール加熱を施し、透過電子顕微鏡により相変化メカニズムの解明を試みた。
東北大学と慶應義塾大学は2024年8月5日、クロム窒化物(CrN)がアモルファス相を介さない相変化により、大きな電気抵抗変化を示すことを発見したと発表した。切削工具の硬質皮膜として広く用いられるCrNは化学的に安定しており、多様な電子物性の付与や結晶構造の制御が可能な化合物だ。
今回の研究では、CrNに高速ジュール加熱を施し、透過電子顕微鏡(TEM)により相変化メカニズムの解明を試みた。低電気抵抗で立方晶(Cubic相)である成膜状態のCrNは、ジュール加熱で高電気抵抗の六方晶CrN2(Hexagonal相)へと相変化する。この変化はナノ秒レベルで誘起され、30ナノ秒での電気抵抗スイッチング動作が可能。電気抵抗比は105以上に達する。アモルファス相を介さず、窒素原子のわずかな移動と結晶構造変化で電気抵抗変化を得られ、メモリデバイスの省エネルギー化が期待される。
アモルファス相と結晶相間を相変化する従来の相変化材料(PCM)は、大きな熱エネルギーを要し、動作電力が高い。その上、材料のカルコゲン元素のテルル(Te)が希少金属で毒性を有することが懸念されていた。
研究グループは、CrN系PCMが、安全で高速かつ大容量な不揮発性相変化メモリに応用できると見込む。今後、CrNメモリ素子の書き換え耐久性の検証や、他の窒化物の相変化現象の研究を進める考えだ。
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