三菱電機が光デバイスの技術として強みにしてきたのが、赤外線の発光に最適なInP(インジウムリン)系である。既に市場投入している200Gbps EMLチップは、InP系の技術を基に独自に開発したDFB(分布帰還型)-LDと光変調器を組み合わせたハイブリッド導波路構造によって実現したものだ。
一方、受信用光デバイスであるPDで一般的に用いられてきたのがSiGe(シリコンゲルマニウム)系のデバイスである。しかし、動作速度100GbpsまではSiGe系で対応できるものの、800Gbps/1.6Tbps向けに求められる動作速度200Gbpsの受信用デバイスになると物性的にSiGe系よりもInP系が優位となる。そこで、InP系の光デバイスの開発ノウハウや製造技術、生産能力で一日の長がある三菱電機として、今回の200Gbps pin-PDチップから市場に参入することを決めた。
なお、200Gbps pin-PDチップは、動作速度200Gbpsを可能にする広帯域化を実現するため、チップ裏面側から光を入射する裏面入射型構造を新たに採用した。これにより光電変換領域のpin接合系径を縮小することが可能になり、帯域を従来の約30GHzから60GHz以上に広帯域化することが可能になる。また、入射光の受光領域を広く確保するため、光が入射するチップ裏面側に凸レンズを集積している。
また、凸レンズ集積構造によって受光領域の直径が従来比2倍の40μmに拡大している。光トランンシーバーで用いられる光のビーム径は10μm程度だが、受光領域が拡大したことにより光トランンシーバーの組み立て工程における入射光の高精度な調整が不要になりメリットがある。さらに、受信用光デバイスの後段に来る信号増幅用ICとの接続について、従来はワイヤボンディングを用いていたが、200Gbps pin-PDチップでは電極を設けたチップ表面を反転させて実装するフリップチップとなっている。これにより、ワイヤボンディングに必要なコストを削減できるとともに、高周波信号伝達の阻害要因になり得るワイヤーをなくすことにもつながるという。
200Gbps pin-PDチップの外形寸法は0.38×0.36×0.15mm。感度は0.60A/W、帯域は60GHz。
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