コロナ禍で製造業のマーケティング手法もデジタルシフトが加速した。だが、業界の事情に合わせたデジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第17回のテーマは「バリューチェーン分析から事業を成長させる手法」だ。
Webマーケティングは単に現在の仕事の受注拡大だけでなく、今後の事業の伸ばし方を模索するテストマーケティング的な意義も担っている。Webマーケティングを行うことで、事業展開のリスクを最小限に抑え、市場への訴求を行いつつ、今後の事業の方向性を決める情報を効率的に集められる。
本記事では、ユーザーのバリューチェーン分析から事業を成長させるための手法を、いくつかの事例を踏まえて紹介する。バリューチェーンを分析することで、自社の事業内容の置かれている立ち位置が可視化され、新たな提供価値を生む施策を立てられるようになる。
受託加工業における経営課題の1つに、付加価値の向上が挙げられる。決まった図面通りに作る受託加工という業態は、不良が生じないことを前提にした価格競争に陥りやすい。その中で、どのように生産性を上げ、付加価値を高めていくかが大きな課題になる。
付加価値向上を単純に「粗利率の向上」と置き換えて理解してしまうと、原価をいかに抑え、単価を高くとれるかという議論になる。だが、それではなかなか良い考えは生まれない。付加価値という言葉の原点に立ち返り、「顧客にとって付加価値の高いサービスは何か」「選ばれやすいサービスはどういうものか」を軸に新しい提供価値を再構築することが、これからの受託加工業に求められていることだといえる。
ここで言うバリューチェーンは、発注するメーカー側のバリューチェーンのことであり、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンを組み合わせたものを示している。
上記のバリューチェーンを分析がしやすいように、受託加工側が関連する部分を抜粋し統合したバリューチェーンを作成する。今回は、樹脂製品の製作におけるバリューチェーンを例として挙げる。この図を作成することで、自社の行っている事業がバリューチェーンのどの段階に位置しているかが分かる。
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