まずはどの市場を対象としたバリューチェーンなのかを決め、図を作成する。樹脂、金属など材質単位での定義が一般的には考えやすい。他にもシャフトやフランジなどの部品に限定したバリューチェーン作成もある。
バリューチェーンの中で、自社のサービス提供部分がどこなのかを記載する。その際には、自社の行っていない他の領域での事業も分かる範囲で記載しておくとよい。
自社の置かれている位置を可視化した上で、新たな提供価値の分析を行う。具体的な切り口については次項で説明する。
事業成長の方向性を考える際に、多くの企業は上流工程に目を向ける傾向がある。例えば、量産品の射出成形を行っている会社が、射出成形用の金型や、中量生産品にも対応できる簡易金型の設計製作、さらに前段階である試作領域での加工も手掛ける、といった取り組みだ。
反対に下流での事業展開を考えると、試作から量産までの一貫対応や、後工程の表面処理、組み立てなども含めたユニット製作などが考えられる。
水平方向への展開とは、ユーザーの選択肢を広げるための最適な工法提案をするといった考え方だ。
試作をメインとした樹脂切削業者の場合を想定しよう。設計開発者が求める加工方法は切削とは限らない。加工方法の選択肢は切削加工、真空注型、光造形などさまざまなものがある。最適な加工方法をユーザー自身が知らないことも多々あり、数ある加工方法の中から最適な手法を選定し、提案するといったサービスは一定のニーズが想定される。
ある意味商社的な立ち位置になるが、加工業者として行うことも可能だ。もちろん、上記の例だと自社だけでは他の加工方法の対応はできない。協力工場との連携が必要になる。
加工工法以外にも同様の考え方は当てはまる。樹脂も金属も加工できるとPRしておけば、金属から樹脂への代替を検討するユーザーが関心を持つはずだ。金属の特性を理解した上で、最適な樹脂材質への転換を提案できる。
大事なポイントとして、ユーザーの求める製品に対し、加工方法の選択肢がある場合、自社で行っていない加工方法を競合と捉えるのではなく、それを含めた最適な価値提案を行うことが挙げられる。営業提案では、自社の技術や工法の優位性だけ比較強調し、案件を獲得しようとすることがしばしば起こる。しかし、それではユーザーの求める本当の解決策の提供、新しい価値の提案が難しくなる。
自社の技術を掘り下げて研究することは当然だが、関連する周辺技術の知識を蓄えることも必要になる。それは、意識して活動しなければ身に付けることはできない。
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