データと現場は乖離する? サプライチェーンを正確に可視化する6つのヒントサプライチェーンの「可視性のギャップ」に光を照らす(後編)(2/2 ページ)

» 2024年08月09日 07時00分 公開
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(3)テクノロジーインフラへの投資

 倉庫内のテクノロジーインフラの更新/統合にリソースを割り当てましょう。これには、WMSやIoTデバイス、クラウドベースのソリューションを導入し、業務を合理化してリアルタイムの可視性を高めることが含まれます。

(4)コラボレーションの促進

 サプライヤーや製造業者、販売業者との連携を促進しましょう。共通のプラットフォームや標準化されたデータ交換プロトコルを導入して、サプライチェーン全体で、シームレスなコミュニケーションと情報の流れを確保します。

(5)従業員教育とチェンジマネジメント

 新たなテクノロジーの活用を最適化するには、従業員トレーニングが重要です。新たなプロセスへのスムーズな移行と受入を確実に実施するために、チェンジマネジメント戦略を導入して、抵抗感をできるだけなくし、効率化のメリットを最大限に生かします。

(6)継続的改善

 倉庫業務において、継続的に改善を行う文化を醸成しましょう。データ分析やフィードバックループに基づいて、プロセスを定期的に評価/改善することで、市場の状況変化に適応できるようにします。

 テクノロジーインフラの更新、ステークホルダーとの連携、従業員教育、そして継続的改善のコミットメント。これらが一体となって、最適なサプライチェーンの可視性を実現する中心的な柱を構成します。

 これらの提言に基づいたアクションをとることで、業務の円滑化や連携の強化、適応プロセスへの道が開け、変化し続ける市場における課題や、そこからもたらされる将来的な機会に対処することができるのです。

テクノロジーがもたらすビジネス上のメリットとは?

 前述のサプライチェーンにおける可視性ギャップを埋めるための提言を実際に採用して大きな成果を上げた、ある企業の例をご紹介します。

 A社は、約130か国で事業を展開しているコンテナ物流とサプライチェーンの総合サービスプロバイダーです。業界のニーズの変化に対応するために、倉庫管理プロセスを最適化するという課題に直面していました。繰り返し作業を無くすとともに、従業員のモチベーションを維持しながら、スペースを賢く活用して、重要な作業に集中できるようにするために、同社では自律型の3Dスキャンロボットを導入しました。

 これによって倉庫や工場の在庫検査と、製品の状態や数量、寸法、棚上の配置についての情報収集が実施できるようになりました。さらに、それらの情報を取り込むAIプラットフォームも導入しました。その結果、次のような成果が得られたのです。

  • 在庫精度が向上、WMSのエラーが4%減少
  • 商品のピッキング/プロセスが大幅にスピードアップし、作業時間を1日当たり平均2時間削減
  • サイクルカウントの自動化により、作業時間を1週間あたり40時間以上削減
  • 商品の置き間違いや紛失への対処時間を、1週間あたり8時間以上削減
  • 倉庫全体の棚卸を、隔週から毎日実施することが可能に
  • 注文商品を100%納期内に出荷でき、顧客満足度が向上

結論

 複雑化の一途をたどるサプライチェーンの環境のなかで、可視性のギャップは、企業に大きな課題を突き付けています。サプライチェーンの担当者は、連続性のあるリアルタイムデータを活用してこの可視性のギャップを埋めるための、新たなイノベーションを導入する必要があります。

 データ収集の課題を解決し、倉庫業務における複雑な問題に対処するには、業務効率を向上させる先進的なテクノロジーの導入を検討すべきでしょう。同様に、継続性とレジリエンスを確保しつつ、先見性のある意思決定のための戦略的ツールとしても役立つ、エンドツーエンドの可視性とデータの正確性を重視することが大切です。

Andrei Danescu
Dexory(デクソリー)CEO兼共同創業者

Dexory(旧BotsAndUs)は英国ロンドンを拠点に、物流倉庫向けの最先端ロボット工学とAlソリューションの開発を行うテクノロジー企業。ダネスクはDexoryの共同創業者で、システム工学と自律技術分野での経験を有するエンジニアでもある。 2004年からロボット開発に携わり、自律型ロボットを世界に広げる機会を探求し続ける。


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