東京工業大学は、面積効率の高い28GHz帯4ストリーム時分割MIMOフェーズドアレイ受信機を開発した。時分割で回路を再利用することにより、省面積かつ低消費電力で高速通信が可能なMIMO技術を創出した。
東京工業大学は2024年7月11日、面積効率の高い28GHz帯4ストリーム時分割MIMOフェーズドアレイ受信機を開発したと発表した。時分割で回路を再利用することでMIMOにかかる回路規模を抑制し、MIMOストリーム数に比例して回路規模や消費電力が増大する課題を解決した。
研究チームは、従来比20倍以上となる0.15ナノ秒で高速スイッチングが可能な高速切替移相器を開発。フェーズドアレイ部で信号の変化よりも速くビーム方向を切り替え、異なるMIMOストリームを同時に受信できる時分割MIMO技術を確立した。400MHz帯域における2.5ナノ秒の信号周期の間に、ビームパターンを4回切り替えられ、4ストリームの時分割MIMO動作が可能となる。
65nm世代のシリコンCMOSプロセスで作成した時分割MIMOフェーズドアレイ受信機ICは、低雑音増幅器と高速切替移相器、利得可変増幅器で構成される受信回路を8系統搭載する。アンテナを備えるプリント基板に実装してOTA測定を実施したところ、5G NR規格に準拠した4ストリーム信号のMIMO通信に成功し、9.6Gビット毎秒の伝送速度を示した。1MIMOストリーム当たりのチップ面積は0.1mm2で、消費電力は8mWだ。
ミリ波帯の無線通信にデジタルMIMO技術を適用しようとする場合、従来の全接続型回路では、MIMOストリーム数分のビームフォーマーを備える必要があった。開発した受信機は、省面積かつ低消費電力で高速通信が可能なことから、IoT(モノのインターネット)機器、モバイル機器に搭載できる。また、6Gの高データレート無線通信システムや、近年実用化が進んでいる衛星通信サービスへの応用が期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.